研究課題/領域番号 |
25630277
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
小松 高行 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (60143822)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 機能性セラミックス材料 / 強弾性結晶 / ガラスの結晶化 / 結晶の微粉化 |
研究概要 |
強弾性結晶beta'-RE2(MoO4)3 (RE:希土類)がガラス(RE2O3-MoO3-B2O3系ガラス)から結晶化する際に、自ら微粉化する現象(自己微粉化現象)について加熱ステージ付きの偏光顕微鏡観察により以下に示す研究成果が得られた。 1)自己微粉化現象は希土類酸化物の種類に強く依存する。特に、Gd2O3, Dy2O3では顕著に自己微粉化が起こるが、Sm2O3ではその程度は非常に小さい。検討されたB2O3量(15, 20, 25 mol%)の範囲では、いずれも自己微粉化が起こる。結晶粒子径が40ミクロン以上になると、結晶の中心からクラックが放射線状に形成される。そのクラックは結晶の粒径の増大と共に成長し、最終的に三角錐状の形をした微粒子に分解する。 2)自己微粉化現象は、550-600oCの熱処理温度域で起こり、この温度は、強弾性と常弾性の転移温度(100oC前後)よりはるかに高いため、強弾性による結晶内部の自発ひずみには直接関係づけられない。通常、ほとんどの場合において、ガラスとガラスから生成する結晶相の密度は、結晶相の方が大きい。しかしながら、本研究の場合では、ガラスの密度が、beta'-RE2(MoO4)3結晶よりも大きいという極めて特異なガラス系であることが明らかになった。このため、結晶化領域、すなわち結晶には大きな体積膨張が誘起され、その結果としてクラックが生成したものと結論づけた。 3)微粉化した個々の粒子において、屈折率の周期的な変化が観測され、レーザーパターニングでの結晶成長と同様に、RE2(MoO4)3結晶内のMoO4構造単位はらせん状に回転しながら結晶成長するというモデルを提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RE2O3-MoO3-B2O3系ガラスから強弾性結晶beta'-RE2(MoO4)3が生成する過程で生じる結晶自らの破壊は、我々が発見した現象であり、極めて特異である。この現象の詳細を明らかにし、さらにこの現象を利用して新たな材料(巨大内部応力誘起材料)に繋げることが本研究の目的である。本研究において、現象の詳細を調べ、自己微粉化現象の機構を提案することができた。提案した自己微粉化機構の概念を展開(ガラス組成と結晶相の設計)することによって、新規な巨大内部応力誘起材料の開発に繋がると確信する。
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今後の研究の推進方策 |
1.結晶内部および結晶とガラス界面に誘起される応力の大きさを複屈折イメージング装置を用いて定量的に評価する。特に、微粉化前の段階、微粉化直前の段階、微粉化直後の段階について応力の大きさと分布がどうのように変化していくかを明らかにする。 2.強弾性結晶beta'-Sm2(MoO4)3が生成する場合は、顕著な自己微粉化現象が起きないことに着目する。この場合でも、結晶の密度は母体ガラスの密度と比べて小さいことには変わりはないことから、内部応力を結晶内部に効率的に閉じ込める可能性があることを示している。Sm2O3-MoO3-B2O3系ガラスの結晶化による応力の大きさ、分布状態を明らかにする。また、ガラス形成成分B2O3の量をかなり含むガラスでも自己微粉化現象を詳細に検討する。これらの研究により、本研究で提案しているアイデアの実証を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度において、強弾性結晶内部に誘起され、自己微粉化に至らしめる巨大な応力測定と集束イオンビーム(FIB)加工による透過電子顕微鏡(TEM)観察を計画していたが、使用装置の不具合等で実験が進まなかった。特に、FIB加工とTEM観察には、かなりの費用が必要であり、結果として未使用額が生じた。なお、研究自体は、加熱ステージ付きの偏光顕微鏡観察により、自己微粉化機構を提案することができ、多くの研究成果を得ることができた。 平成26年度において、強弾性結晶内部に誘起され、自己微粉化に至らしめる巨大な応力について、特に、複屈折イメージング装置によるマクロスケールでの定量的評価とFIB加工とTEM観察による原子レベルでの評価を、平成25年度の未使用額と平成26年度の交付額を使用して実施する。具体的には、観察用試料作製のための物品、実験補助謝金、研究成果発表旅費に使用する。
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