イオン性結晶は一般に脆性を示す。しかし一部のイオン結晶では、室温のような低温であっても塑性変形が容易であることが報告されており、その機構を解明することは、脆性材料の靱性向上の糸口となる可能性がある。そこで本研究では、第一原理計算を用いて、塑性変形が容易に起こることが知られているAgCl等に注目し、第一原理計算とGSF(Generalized Stacking Fault)エネルギー解析を用いて、すべり変形抵抗の定量評価を行った。その結果、AgClでは、複数のすべり面でのすべり変形が可能であることが判明した。その起源は、すべり面を介したAg-Agイオン間の共有結合の形成であることがわかった。
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