研究代表者は、固相と固相の界面で起こる反応拡散法を用いることで、セラミックス結晶粒子が容易に高配向化する現象を報告している。平成25年度は、固相と気相の間で起こる反応拡散を利用することで、結晶配向セラミックスの作製に成功した。最終年度(平成26年度)の研究によって、より高品質な平板状の結晶配向セラミックスを作製し、結晶構造を回折法と分光法を用いて解明するとと共に、酸化物イオン伝導度の測定を行なった。 結晶粒子がランダム配向した板状の焼結体基盤に対して、1450℃で反応性のガスを吹き付けることで、アパタイト型ゲルマン酸ランタン(La9.33+2xGe6O26+3x)のc軸が焼結体表面に対して垂直に高配向(ロットゲーリングファクターの値は0.70)した結晶配向セラミックスを作製した。この酸化物イオン伝導度を複素インピーダンス法で決定し、さらに単結晶X線回折法を用いて結晶構造を解明した。得られた構造モデルには、格子間に過剰な酸化物イオンの存在が示されたことから、ラマン分光法で確認したところ、これを支持する結果が得られた。c軸配向方向の酸化物イオン伝導度を573 K から973 Kの範囲で求めたところ、温度の上昇に伴い6.3 × 10-7 S/cm から1.04 × 10-2 S/cmへ増加した。アレニウスプロットから、イオン伝導の活性化エネルギーを求めたところ1.2eVであった。当該アパタイト配向多結晶体は過剰な酸化物イオンを格子間に含んでおり、化学式はLa9.68Ge6O26.52(x = 0.17)で表される。
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