研究課題/領域番号 |
25630282
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
春日 敏宏 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30233729)
|
研究分担者 |
小幡 亜希子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40402656)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ケイ酸アルミニウム / ナノチューブ / イモゴライト / 炭酸カルシウム / シロキサン / バイオマテリアル / 綿玉状構造体 / 細胞親和性 |
研究概要 |
本研究は、ケイ素含有炭酸カルシウム(SiCC)/PHA複合材料を繊維化し、これを骨格とする綿状構造体としたものを基材とし、さらにその繊維表面に親水性のケイ酸アルミニウムナノチューブ(イモゴライト)を被覆して、機能を高度化させるものである。本年度は先ず、それらの構造を制御する方法を検討した。 1.SiCC粒子の作製:アミノプロピルトリエトキシシランを含む液を用いて炭酸ガス化合法でSiCC粒子を生成させた。SiCC粒子中にはバテライトが5~20 nmのラメラ状一次粒子として含有され、そのc面にはシロキサンが配位していること、またシロキサンがバテライトを安定化し、生理緩衝溶液中での溶解を律速することを明らかにした。合成の際、SiVの前駆体内部でシラン源の縮合とバテライトの結晶化が並進し、上述の一次粒子構造の生成に寄与することを見出した。また、炭酸ガス化合法における溶媒中の炭酸イオンの溶存性に着目し、これを調節することにより、SiCC中のバテライト一次粒子のc面配向制御ができることを見いだした。 2.イモゴライトの作製と評価:(1)イモゴライトの組成を変化させるべく諸条件を調整したが、化学量論組成から大きく変化させることは難しかった。得られたイモゴライトの親水性はいずれも非常に高く有意差は見られなかった。(2)イモゴライトの生体親和性をMC3T3-E1細胞を用いて培養試験により評価した。初期接着性が高いが、増殖性には影響がないことが示された。(3)Lysozyme吸着性の評価を試みたが、多量のイモゴライトを準備するのが難しく、有意差を確認できなかった。さらに検討を続ける。 3.綿玉状構造体の作製: SiCCを用いて、P(3HB-co-4HB)との複合材料を作製し、電界紡糸法で約5~10μmの繊維径の綿玉状構造体に成形することができた。今後さらに繊維径を太くする条件を検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的として設定した項目について順調に結果が出ていると判断する。とくに、ケイ素含有炭酸カルシウムの構造解析についてはかなり進んだと思われる。一方、イモゴライトの組成制御については当初計画のような制御は容易ではなく、また組成を変化させても親水性に大きな違いが出ないことがわかった。また、タンパク吸着の実験方法を見直す必要もある。以上を総合的に見て、「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度の実験を継続しつつ、それらの結果を基礎として、綿状構造体へのイモゴライト被覆法の検討を行う。 繊維中のSiCCとイモゴライトの水酸基との相互作用が期待される。ただし、P(3HB-co-4HB)の強い疎水性に打ち勝って結合させる必要がある。まずは、それらの構造解析の結果(前年度)をもとに、強く相互作用する構造と期待されるSiCCを調製(アモルファス相やシロキサンの量・化学状態などを制御)し、これを用いた複合材料とイモゴライトの組み合わせでディップ法のみで被覆できるかを調べる。しかし、難しいことも予想されるため、その場合には、電気泳動法を用いて付着させることを検討する(電着法)。イモゴライト粒子表面のAl-OH基にリン酸基を配置する等、表面電荷制御も加えて最適な付着条件を探る。イモゴライト付着量の制御、付着力、付着状態の評価を行う。基材である複合材料の機械的特性・化学的特性(カルシウム・ケイ酸イオン徐放能)を犠牲にしないよう、極めて薄い被覆で最大の効果が引き出せる条件を探る。 イモゴライト被覆した綿状構造体の生体親和性評価を行う。 マウスおよびヒト骨芽細胞様細胞を用いて、イモゴライト被覆型綿状構造体への初期接着性、増殖性、分化能、石灰化について観察する。イモゴライト被覆の効果としては、おそらくは、初期接着性で大きな差が出るものと期待される。増殖性に大きな差はなくても、結果としては骨形成が早まる可能性がある。また、SiCCからのケイ酸イオンの徐放が増殖性や分化能・石灰化を早めることが期待される。これらの効果が区別できるよう実験系を組み、それぞれの役割を明らかにする。また、本年度評価が難しかったタンパクの吸着性について、実験法を洗い直して再検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初計画のタンパクの吸着性の実験方法を見直す必要が生じたため、プロトコルを整理して次年度に実験することとし、これに必要な費用を確保する。 タンパクおよび解析用カラムの購入に充てる。
|