研究実績の概要 |
(A)ウルツ鉱型β-CuAlO2の合成を試みたが、多形であるγ相が生成し、β相は得られなかった。しかし、ウルツ鉱型構造の単相がCu(Ga1-xAlx)O2組成で0≦x≦0.7の範囲で得られ、これによりバンドギャップを1.5~2.2eVの範囲で制御できた。このことは、酸化物半導体の応用領域を近赤外域から可視光域へと広げ、今後の応用研究の進展を期待させる。 (B)β-CuGaO2, β-AgGaO2のXPSスペクトルを、多形のデラフォサイト構造のそれとともに測定した。その解析により、ウルツ鉱型三元系酸化物半導体の電子構造の概要が明らかとなった。 (C)前年度はGGAおよびsX-LDAを汎関数としたバンド計算を行ったが、この結果は前項の研究で得たXPSを再現できなかった。このためクーロン反発を考慮したLDA+Uを使用し実測のXPSを再現するU値を求めた。最適化されたU値での計算結果より、価電子帯の強いCu 3dあるいはAg 4dの寄与および伝導帯でのGa 4sとCu 4sあるいはAg 5sの混成が認められた。それらからβ-CuGaO2の正孔及び電子の有効質量がそれぞれ0.21 me*/m0、1.7~5.1 mh*/m0となることが示された。また、β-CuGaO2のバンド端近傍での光吸収係数は2×104 cm-1に達し、CdTeなどと同様太陽電池の光吸収材料として適することが示された。 (D) GaサイトをTiで置換したβ-AgGaO2で、伝導度を~10-1Scm-1まで付与することに成功した。他の系では電荷補償機構がいまだ不明であり、p型ドーピングには成功していない。今後の単結晶など良質結晶の作製に期待がもたれる。 (E)β-NaGaO2をターゲットとしたスパッタ法で作製した薄膜をイオン交換することでβ-CuGaO2薄膜の作製に成功した。今後、ドーピングや素子作製に期待が持てる。
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