研究課題/領域番号 |
25630289
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
須藤 祐司 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80375196)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 相変化材料 / アモルファス / 結晶化 |
研究概要 |
本研究では優先酸化を用いた相変化材料の表面・界面組織制御による極小結晶相電流パス自己形成に挑戦し、優先酸化が結晶化挙動に及ぼす材料学的因子を解明するとともに、相変化メモリ高速書換化の新手法を確立することを目的とし、下記の事を調査した。 (1)優先酸化層の形成手法の確立 Siを含むGeTe薄膜において、室温にて3か月程度放置すると結晶化に伴う電気抵抗変化が二段階で進行することが分かった。このような結晶化過程の変化は、表面酸化に起因すると考えられる。実際、XPS分析の結果、3か月間放置した試料の表面には、数nm程度のSi酸化物が形成されていることが分かった。その知見を基に、酸素プラズマ処理による表面優先酸化を試みた。その結果、1分程度の短時間での酸素プラズマ処理においても、表面にSi酸化物を優先的に形成できることが分かった。また、それら試料についても、二段階の電気抵抗変化が生じることが分かった。 (2)優先酸化層からの不均一核生成のメカニズム 優先酸化層を有するGeTe-Si薄膜は、結晶化に伴い二段階の電気抵抗変化を呈する。TEM観察により、一段階目の電気抵抗変化では、表面のみから結晶が不均一核生成をしていることが分かった。一方、二段階目の抵抗変化では、試料内部で結晶が均一核生成していることが明らかとなった。GeTe薄膜の結晶化温度に及ぼすSi濃度の影響を調査した結果、Si濃度の増加に伴い結晶化温度が上昇することが分かった。すなわち、Siが優先表面酸化された薄膜では、極表面のSi濃度が低下するため、結晶化温度が僅かに低下し、二段階の電気抵抗変化が生じたと示唆された。従って、表面酸化形成によるGeTe-Si薄膜極表面でのSi濃度勾配が不均一核生成を引き起こしていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、優先酸化層の形成手法を確立した。特に、プラズマ酸素処理による優先酸化層の形成手法について明確にした。また、薄膜極表面のXPS分析やTEM観察により、優先酸化層形成の確認を行うとともに、表面からの結晶の不均一核生成および薄膜内部の均一核生成による二段階の電気抵抗変化挙動を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、アモルファス層の電気伝導に及ぼす表面優先酸化層の影響を調査するとともに、その優先酸化層が結晶化速度に与える影響を調査する。また、GeTeの結晶化温度に及ぼすSi濃度の影響を詳しく調査し、結晶化温度、結晶化速度などの観点から、優先酸化層の形成に最適なSi濃度を決定する。さらに、それらの知見を基に、不均一核生成層を用いた相変化メモリの開発を検討する。
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