本研究では、pn接合部での「熱起電力」と「光起電力」を組み合わせた高効率近赤外光発電セルを創製することが目的である。このためには、単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotube: SWCNT)を化学修飾することにより、p型SWCNTとn型SWCNTを合成する必要がある。今年度は、カルボキシル基修飾したp型SWCNTと、窒素原子を骨格置換したn型SWCNTのpn接合セルをスプレー塗布で作製し、電流-電圧特性、光起電力を測定した。 幅10 mm、長さ25 mmのスライドガラスの片側に幅5 mmの銀電極を真空蒸着し、銀電極2mmを残してp型SWCNT含有エタノール分散液をスプレーした。同様の方法により、n型SWCNT含有エタノール分散液をスプレーした。作製したp型SWCNT薄膜とn型SWCNT薄膜を10 mm×10 mmの領域で接合するように重ね合わせてセルを作製した。このセルのp型SWCNT薄膜とn型SWCNT薄膜が重なっている部分に擬似太陽光(100 mW/cm2)を照射し、電流-電圧特性、光起電力を測定した。 太陽光照射、近赤外光の照射の有無に限らず、電流-電圧曲線は直線状となり、オーミック接合であり、pn接合は形成されていなかったことがわかった。また光照射による光起電力は発生しなかった。これはpn接合が形成されていないために、それぞれのp型SWCNT薄膜とn型SWCNT薄膜のキャリヤがサイト分離されないためと考えられる。
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