研究課題/領域番号 |
25630293
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
江利口 浩二 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70419448)
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研究分担者 |
斧 高一 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30311731)
鷹尾 祥典 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80552661)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プラズマ / 誘電率 / 欠陥 / 有機膜 / シリコン |
研究実績の概要 |
平成26年度は前年度に引き続き,(1)薄膜材料の表面・界面構造における誘電率(電気容量)ならびに粘弾性関数に代表される機械特性が,プラズマプロセス中にシース領域を通して入射するイオンのエネルギーにより支配されることを,窒化ホウ素膜(BN膜)を用いて実証した.また,(2)薄膜材料のプラズマ反応表面・界面欠陥の構造変化が,熱的効果に加え,局所的な双極子(誘電率)の構造に支配されることを大気圧マイクロ波アニール法により明らかにした.さらに,(3)有機薄膜の誘電率が,プラズマ反応素過程の1つである光照射により変動することを,低誘電率薄膜として注目されているlow-k膜構造を用いて実験的に明らかにした.一方,(4)プラズマ反応表面・界面欠陥構造形成過程(特に反応層厚さ)が,材料表面の原子面密度に依存することを,面方位の異なる単結晶Si基板を用いて明らかにした.これら実験結果によって,最終年度における有機薄膜構造でのプラズマ反応表面・界面構造変化機構に関する実験的知見を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低誘電率膜(low-k膜)の誘電率変化については,プラズマからの光照射の効果を明らかにすることができた.また,非晶質SiO2膜中の誘電率の制御については,マイクロ波アニールに代表される外部電界印加が有効であることが明らかになった.一方,入射イオンエネルギー最適化による構造制御については,窒化ホウ素膜系の知見を活用し,平成27年度に有機膜系サンプルを用いて実施予定である.(有機薄膜付きサンプルは入手済)これらを元に今後は,プラズマ反応表面・界面の誘電率制御を目指し,これまで確立した解析手法(含:粘弾性・硬さなどの機械特性解析)を駆使し,構造変化機構を明らかにしてゆく.アプローチの変更は若干発生したが,多くの基礎データを入手することができた.最終年度では,有機膜系に対する知見が得られると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
有機膜サンプル作製は平成26年度後期に完了した.平成26年度に重点化して得られた,マイクロ波アニールによる非晶質構造における欠陥構造変化や光照射による誘電率変化の知見を,上記有機膜サンプルに応用する.また材料表面の原子面密度とプラズマからの入射イオンエネルギーの統計的ゆらぎの効果による反応層膜厚のスケール,さらに,ナノ領域の粘弾性に代表される力学特性への影響に関する知見も,今年度のプラズマプロセス設計に応用する.プラズマプロセスにおける光照射効果に加え,入射イオンエネルギー効果を中心に,有機薄膜を想定したサンプルを用いて,反応表面・界面の誘電率変調の可能性について検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,大気圧プラズマ電源購入を計画していたが,産業界のニーズを鑑み,窒化ホウ素膜の構造変化解析,欠陥回復機構の解明に注力した.そのために,実験計画に関し若干の方針転換を行った.一方で,新材料・表面層内の欠陥回復・構造変化解析に関する研究成果の発表に経費を充当した.また,当初は特殊基板の購入を進めていたが,上記の方針転換に伴うサンプル構造の変更を踏まえ,試作サンプルの納期を平成27年度前半に移行した.
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次年度使用額の使用計画 |
サンプル作製費用に重点的に配分する.また,大気圧プラズマ電源については,他の実験で利用している装置を有効活用できるかどうか前期に判断する.サンプル試作費用を加味しながら,今後の研究活動において有効活用できるさまざまな有機系・非晶質構造におけるプラズマ反応表面・界面誘電率変動のデーターベースを効率的に構築する予定である.
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