研究実績の概要 |
本研究では,汎用走査電子顕微鏡(SEM)のための高輝度な熱電子放出型の電子線源の作製とその評価を目的としている.高融点金属極細線を高電圧微小放電溶接法で接合して,ヘアピンフィラメントよりも先端半径が小さなフィラメントを形成する.そのようなフィラメントは高輝度な電子線源となることが予想される.そこでまず,素線の材質及び線径の選択,溶接条件の検討を行った. その結果,線径50μmの3%Re-W合金極細線が試作フィラメント線材として適していることを見いだし,これを使い溶接後の先端半径を20μm以下と,ヘアピンフィラメントの10分の1以下にすることができた.次に,試作フィラメントの評価を目的とし,作製したフィラメントをフィラメント用台座に溶接し,実際のSEMに取り付けてSEMの電子線源とし,汎用SEM中で画像撮影を行う.ヘアピンフィラメントを用いた場合との画像の比較,ビーム電流値の比較を行い,フィラメントの寿命についても検討した. 画像の比較を行うために標準試料を高倍率(10,000倍)で観察・撮影した結果,試作フィラメントで撮影するほうが良好で奥行きのはっきりした画像を得られることが示された.さらに,ウェーネルトの孔径を標準の2mmから1mmにすると,試作フィラメントに流れるビーム電流は,ヘアピンフィラメントを用いたビーム電流の約20分の1と非常に小さくなることを確認した.また,実使用環境を模した条件でフィラメントの寿命を調べて,ヘアピンフィラメントと同等であることが示されたが,これはビーム電流が小さいためと思われる.
|