本研究は2カ年計画で、熱電材料の合成、接合体の作製および特性評価、総合評価について実施する。実験項目は次の通りである。1)添加量の大きく異なるSi系およびSi-Ge系熱電材料を合成し、各材料の熱電特性(ゼーベック係数、電気伝導率、熱伝導率)を室温~100℃の温度範囲で計測する。2)合成した材料を用いて組み合わせの異なる三組の接合体を真空拡散接合で作製する、3)接合体の並列方向に温度差(~50℃)を与え、接合体側面について、赤外線サーモグラフィーを用いて温度分布、デジタルマルチメータを用いて電位分布を計測する。4)熱電特性評価装置を用いて、接合体の熱電特性を室温~100℃の温度範囲で計測する。5)計測結果を詳細に解析して、熱流と電荷流が接合体内部でどのような経路をとるかを基礎的に明らかにする。 平成25年度は、実験項目の1)および2)を実施した。添加剤にはボロンを用い、ボロンの添加量で電気伝導率、SiとGeの固溶体化で熱伝導率を制御した。制御範囲は、電気伝導率、熱伝導率共に1~10倍とした。まずSi-Ge固溶体でボロン添加量の異なる材料を合成し、拡散接合体の試作も実施した。平成26年度は、実験項目2)から5)を実施した。本課題の目的は、電荷流と熱流の分離が可能であるかどうかを検証するために、熱電材料の並列接続時の熱電特性を調査することである。熱伝導率の比較的大きなSiおよびSi-Ge固溶体を用いたために、接合体の熱電特性は性能が悪い方の材料に引っ張られる結果となり、単純複合則では説明できないことを確認できた。また並列接続では、試料の大きさによっても接合体の熱電特性は変化することも明らかにした。現段階では、熱流と電荷流の分離現象を確認するには至っていない。
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