Al-Mg系合金は、300℃程度の高温度域で粒界のNa偏析による粒界脆化現象を生じる事が明らかにされている。この粒界のNa偏析の影響を無害化するための方法の一つに、Naと親和力の高い元素の添加が有効であることがこれまで報告されている。本研究では、合金元素としての添加を金属材料を液体の金属に浸漬する処理によって実施する手法で、Al-Mg系合金の高温粒界破壊の抑制に及ぼす添加元素の影響を調査した。その結果、Naを2ppm程度含むAl-5%Mg合金を液体のIn中(200℃)に一定時間浸漬させてから、高温引張り試験を行うと、粒界破壊が抑制することが明らかになった。ただし、浸漬するInを高温で長時間浸漬させると、粒界でのInが液相となることで従来いわれているようなInによる液体金属脆性も発現することが明らかになった。Al-Mg系の実用合金である5083合金についても同様の検討を行う事によって、InやBiを液体金属とした浴に浸漬することによって、高温での延性が大きくなることが明らかになった。この場合でも、Al-5%Mg合金と同様に、液体金属に浸漬する前の材料の組織の違いによって、影響の度合いが大きく変化することが明らかとなった。これまで、材料の特性改善を目的とした合金元素の添加は、材料を製造するときの溶解や鋳造といったプロセスでのみ行われてきたが、本研究で明らかにされたように、バルク固体の材料の表面から、液体金属の粒界拡散現象を用いて合金化し、さらには特性の改善に繋げることができることを世界で初めて明らかにした。
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