平成25年度は主に、素子作製用の装置作製を行い、材料としてはカイラルネマチック(N*)液晶を使用した。平成26年度は素子の読み取り光学系の作製、材料としてはネマチック(N)液晶を主に使用した。以下に実績について分類毎に報告する。 紫外線の照射により硬化する液晶材料を用いるため、系統的なデータを得るためには重合条件を精度よく統制する必要があった。そこで、本予算にて購入の装置により、紫外線の照射強度、照射時間および重合時の温度制御が可能な露光光学系を作製した。その結果、同一条件での素子を精度よく作製できるようになり、異なる重合条件および各種フォトマスクでのパターニング特性についての基礎的データが得られるようになった。 本研究では、指紋状のテクスチャが得られるN*液晶と、黒い帯状のテクスチャが得られるN液晶を使用し、一般的に画像の類似性評価に使用される輝度情報のみの相関以外に、それぞれのテクスチャに適した画像処理アルゴリズムを検討した。N*液晶では、小領域毎に縞を抽出し、各縞の角度を算出するプログラムを開発し、指紋状組織の角度分布などの情報を利用することが可能となった。N液晶では、黒い帯を抽出し、二値画像としたデータを元に類似性を評価するプログラムを開発した。 また、これまで偏光顕微鏡を用いて素子画像の取得を行っていたが、小型のカメラを用いた読み取り光学系を作製した。実際の使用を想定し、読み取り光学系への素子の固定は厳密な固定は行わず、1 mm弱の位置ずれを考慮した認証プログラム開発を行った。書き込まれたロゴマーク等の二次元シンボルを頼りに認証に用いる範囲を割り出し、その後は上述の類似性評価アルゴリズムを用いるプログラムを開発した。 以上のように、液晶のランダムテクスチャを応用したセキュリティ素子の作製から認証に至るまでの基本的なハードウェアおよびソフトウェアの構築を行った。
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