研究課題/領域番号 |
25630310
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
今井 裕司 仙台高等専門学校, 情報ネットワーク工学科, 准教授 (40334693)
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研究分担者 |
庭野 道夫 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (20134075)
木村 康男 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (40312673)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 圧電 / ポリフッ化ビニリデン / パラジウム / 水素センサ / 圧力センサ / 温度センサ |
研究概要 |
我々は,厚さ数百μm程度の自発分極を有するβ型のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いた多機能センサフィルムを開発している。このPVDFフィルム上にパラジウム(Pd)電極を堆積させることにより,外部電源を必要とせず室温で自立動作可能な水素センサを開発してきた。さらに,フレキシブルな構造から,水素センサのみならず脈拍計などの圧力センサにも応用可能である。本研究課題では,高感度の水素センサに加え,圧力センサなどの多機能センサへの発展を試みている。 高感度の水素センサの実現を目指して,PVDFフィルムとPd電極の作製条件の検討を行ってきた。PVDF粉末の混合濃度,溶媒の種類,乾燥温度を検討した結果,有機溶媒とリン酸アミド化合物の混合溶媒にPVDF粉末を3~7wt%溶解・撹拌し,その溶液をガラス基板上で80℃にて乾燥させたPVDFフィルムの水素ガス検知特性が最も安定していることがわかった。この安定した水素ガス検知特性は多孔質なPVDFフィルムの構造が影響することを走査電子顕微鏡観察から明らかにしてきた。電極には,水素に対して触媒作用を持つPd,白金(Pt),白金-パラジウム合金(Pt-Pd)で検討を行った結果,10nm厚のPd電極を用いたときが最適であることがわかってきた。 多機能センサへの応用では,PVDFフィルムの電極にアルミニウムを用いて評価を行った。温度依存性を調査したところ,室温から80℃までの外温に対して,PVDFフィルムから一定の出力電圧の増加を確認できた。また,応力をPVDFフィルムに印加・除去したところ,スパイク状の電圧が出力されることを確認した。 今後,各種センサの測定データをさらに蓄積,解析し,センサ性能を評価していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,高感度の水素センサに加え,圧力センサなどの多機能センサへの応用を行っている。水素センサに関しては,ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムと電極の評価を行い,それぞれの作製条件の最適化を行っている。作製したPVDFフィルムの結晶構造解析をフーリエ変換型分光装置(FTIR)とX線回折装置(XRD)にて行い,微細構造観察には走査電子顕微鏡(SEM)を用いている。これらにより水素ガス検知特性とPVDFフィルムの結晶構造および微細構造との関連性を突き止めているが,PVDFフィルムから発生する変位電流(電荷)をさらに詳しく測定する必要があり,引き続きこれらの評価を行っていく。 圧力センサなどへの応用には,当初基板にPVDFフィルムをパターニングして行う予定であったが,PVDFフィルムのフレキシブルな性質から,直接PVDFフィルムに電極を形成して評価を行うことにした。安価なアルミニウム電極にて,温度特性や圧力特性の評価を行っており,電極・PVDFフィルムの整合性,センサ構造(電極の形状)についても評価を行っている。 以上,当初の研究実施計画より若干の変更点や遅れはあるが,おおむね順調であるとみている。
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今後の研究の推進方策 |
水素センサと圧力センサなどの多機能センサの性能評価を引き続き行う。水素センサに関しては,様々な濃度の水素をセンサにさらして,感度,応答速度,水素選択性,安定性について評価する。PVDFフィルムからの電圧測定を既存の高速アナログ計測ユニットをにて,変異電流測定を既存のエレクトロメーターを用いて行い,水素ガス検知特性や水素濃度依存性を評価する。さらに,回復速度の評価,すなわち,Pd電極からの水素脱離過程の評価をPd電極表面の触媒反応の観点から,フーリエ変換型赤外分光装置(FTIR)を用いて行う。特に,PVDFフィルムやPd電極の作製条件との関連を調べ,高感度で高速応答が可能なセンサの査定を行う。 圧力センサに関しては,印加する圧力の大きさと圧力センサからの出力電圧(感度)の関係,圧力印加時の出力電圧の応答性,PVDFフィルムや電極の形状と感度,応答速度との関連を調査しながら,センサ性能の評価を行う。 研究代表者と研究分担者は,引き続き各種センサの測定データを解析し,センサ性能を評価していく。
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