研究課題/領域番号 |
25630319
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
武藤 泉 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20400278)
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研究分担者 |
原 信義 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40111257)
菅原 優 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40599057)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 材料加工・処理 / 腐食防食 / 水素侵入 / 浸炭 |
研究実績の概要 |
鋼への水素侵入と孔食などの腐食反応との関係を定量的に把握するため、本研究で新たに開発した水素透過試験用マイクロセルを用いて研究を行った。炭素を約0.45%含むフェライト・パーライト組織の炭素鋼に対して、微量の硫黄を添加した材料を準備し、MnS介在物起点の孔食と水素侵入との関係を調べた。試験領域は約100μm×約100μmとし、単一のMnSを含む領域や、MnSを全く含まない領域を選定して実験を行った。その結果、MnSが存在しない領域では、孔食が発生しにくく、しかも腐食が起こっても水素は侵入しにくいことが分かった。これに対して、MnSが存在する領域では、容易に孔食が起こり、MnSの溶解生成物の影響で、水素侵入が促進される傾向があることが分かった。このように、鋼への水素侵入はMnSなどの硫化物系介在物を起点とする腐食が原因であることが分かったため、オーステナイト系ステンレス鋼に対して浸炭を行い、MnSの溶解防止、ひいては水素侵入防止の可能性を検討した。その結果、500℃以下の低温で炭素を過飽和に鋼に固溶させるとMnS起点の孔食が起こらなくなることを見出した。固溶炭素により、鋼母地の溶解速度が低減することが主な原因ではないかと推察される。炭素の固溶により、鋼の格子定数が大きく変化し、アノード溶解に対する特性が変化するものと考えられる。浸炭などの侵入型元素により鋼の格子定数を大きく変化させることで、腐食を抑制し、水素侵入を軽減することが可能であると考えられる。
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