焼結は膨大な粒子の関与する複雑な現象である。本研究では先進的な製造技術の革新につながる基盤を築くことを目的として、焼結における複雑なミクロ構造を3次元再構成し、微視的な構造と焼結の動力学との関連を探求している。 前年度は放射光X線マイクロともグラフィーによりテープ成形したガラス球粒子の粘性焼結における気孔構造の直接観察を行った。しかし、放射光X線マイクロトモグラフィーの分解能は0.28μmであり、実験には粒径8μmのガラス球を用いた。今年度は、さらに微細な粒径の粒子の焼結挙動をより詳細に解析するため、収束イオンビームによる断面加工と断面の走査型電子顕微鏡観察を繰り返すことにより、3次元構造を再構成するFIBトモグラフィー法を焼結過程の研究に適用した。試料は粒径0.9μmのAu粒子とし、分解能35nmで気孔構造を観察した。3次元画像より、各焼結温度における焼結体の相対密度、比表面積、曲率分布、表面エネルギーテンソル、焼結応力を解析し、比表面積と相対密度との間に比例関係が成立することを見出した。この比例関係はガラスの粘性焼結においても、また、Au結晶粒子の粒界拡散による焼結においても共通しており、焼結機構の詳細によらない普遍的な関係として成立することを明らかにした。焼結応力はエネルギー法と曲率法の2種類の手法で解析し、焼結応力と相対密度、粒径との間の関係式を提唱した。エネルギー法では焼結応力は相対密度によらずほぼ一定であったが、曲率法で求めた焼結応力は相対密度の増加とともに、著しく増加した。 さらに、窒化ケイ素の液相焼結についても適用を試みたが、緻密で、かつ、優れた超塑性特性を示すナノ材料は得られたものの、絶縁体であるため、FIBトモグラフィーによる微構造観察はうまくいかなかった。
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