研究課題/領域番号 |
25630325
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
野瀬 正照 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (70269570)
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研究分担者 |
松田 健二 富山大学, その他の研究科, 教授 (00209553)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自己組織化 / 自己硬化 / 耐酸化性 / ナノ複相構造膜 / スパッタ膜 |
研究実績の概要 |
(1)CrAlN/BNナノ複相構造膜:ClAlN/18vol%-BN膜の成膜直後の硬度と実効ヤング率は、それぞれ37GPa、334GPaであった。それを大気中800℃で1~8時間まで加熱処理したところ、自己硬化性を発現し、加熱1時間後で硬度、ヤング率共に最大値を示し、それぞれ47GPa、 386GPaになった。さらに熱処理時間を延長し、2時間の熱処理で、それぞれ42GPa、 358GPaとなったが、その後はこれらの値がほとんど変化せず、8時間後でもそれぞれ37GPa、 369GPaとほぼ成膜直後の値を維持していた。この変化は酸化により硬度の高い緻密な層が表面近傍に形成されることが主な要因であることを電顕観察などの結果からすでに見出している。このような自己組織化が発現するのは、この膜ではCrAlN微粒子を取り囲むようにBN相が存在するためであることを原子分解能透過電子顕微鏡による組織観察とEDS分析の結果から明らかにした。
(2)AlN/SiCNナノ複相構造膜:AlNに数%程度のSiCNを複合化させた膜で、大気中800℃×1時間の加熱で硬度が32GPaから33~34GPaと僅かに上昇するものが見られ、ほとんどの膜で少なくとも硬度の低下が起きないことを確認した。さらにAr中で加熱した場合には明らかに自己硬化性を示し、900℃×1時間でも硬度が36GPaまで上昇するものもあった。これらの特性変化が発生する組成範囲は概ね明らかになった。これらの膜のXRDによる解析では膜構造に大きな変化は見られず、またFE-SEMによる表面観察結果からも硬度の変化に対応した表面形態の差異は見いだせなかった。さらにTEMによる断面観察結果からも結晶粒サイズの変化も検出できなかった。 以上のことから、現象としての特性変化を見いだせたが、特性変化に対応した組織や構造の変化を十分に把握できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)CrAlN/BN膜についての追加的研究は予定通り実施できた。 (2)AlN/SiCN膜の大気中、Ar中における熱処理による硬度等の変化の調査とその組成範囲については計画通り実施できた。しかし、その特性変化に結びつくような組織の変化を、数多くの分析機器を駆使したにも関わらず、未だ十分に把握できなかった。そのため自己組織化のメカニズム検討にまで至っていない。 (3 (2)の研究で、組織変化の把握のため各種分析機器をつかった構造評価にほとんどの時間を費やした。そのために酸素分圧の影響を調べる時間的余裕が無かった。この系では、Ar中熱処理では硬度が上昇し、大気中熱処理では硬度が低下する膜も見出しているが、酸素分圧を調節した雰囲気下での熱処理実験が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)CrAlN/BN系膜については、一応メカニズムも解明できたと考えられるので終了する。得られた知見は他系の膜でのメカニズム検討に応用する。 (2)AlN/SiCN膜については、同じ熱処理条件でも硬度の上昇、維持および低下の3種類の特性変化を示す組成の膜をそれぞれ見出しており、今後はTEMとXPSを使って特性変化に対応した組織や構造の変化を見出すことに注力する。 (3)さらに同系の膜で酸素分圧を調節した雰囲気下での熱処理実験を推進する。 (4)窒化物/酸化物系の膜については昨年度に引き続き研究対象から除外する。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額198円で購入すべき物品等がなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の配分額500千円と合わせて有効に使用する。
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