研究課題/領域番号 |
25630333
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
菊地 竜也 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60374584)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | カルシウム還元 / マイクロ・ナノ粒子 / 電解コンデンサ / アノード酸化 |
研究概要 |
本研究においては、酸化物を金属カルシウムにより直接無電解還元する新しいプロセスを用い、高い電気容量を持つ新規電解コンデンサ用のTi-Zr合金を作製することを目的としている。本年度においては、TiO2およびZrO2マイクロ粒子を金属カルシウムにより同時還元し、Ti-Zr合金を得ることを試みた。 ZrO2マイクロ粒子、溶融塩である塩化カルシウム、および還元剤である金属カルシウムをチタンるつぼ中に封入し、1173Kの無電解還元を行った。カルシウム量が理論反応当量に等しい場合には、Zrの低級酸化物やCaとの複合酸化物が生成し、金属相は得られなかった。これに対し、過剰の金属カルシウムを投入することにより、Zr単相が生成した。Zr中に含まれる不純物酸素の量は、還元剤カルシウム量とともに減少し、カルシウム量200%において0.16wt%の低い値となった。一方、さらにカルシウム量を増大すると、生成Zr金属中に含まれる不純物酸素量は増加した。生成したZrをSEMにより観察すると、数µm程度のZr粒子が焼結したマイクロポーラス構造であることがわかった。還元時間の増大とともに、Zrの焼結の焼結が進行し、表面積は小さくなった。TiO2を用いたカルシウム還元においても、ZrO2の場合と同様の還元挙動を示した。 上述の実験結果を考慮し、TiO2およびZrO2を混合した酸化物粉末をカルシウム還元することにより、マイクロポーラス構造を持つTi-Zr合金の試作に成功した。生成した合金組成は5%以内の差に収まっており、電解コンデンサ用電極として十分に使用可能であると予想された。ポーラスTi-Zr合金の表面積は0.55m2g-1であり、電解コンデンサの電気容量増大に大きく寄与するものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画どおりにTi-Zrマイクロポーラス合金を試作することに成功した。また、研究過程において、カルシウム還元の詳細なメカニズムを明らかにするとともに、不純物酸素濃度の低い合金生成条件を明確に見いだした。したがって、本年度の研究は当初計画以上に進展し、学術的・工業的に意義ある知見が得られたと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度の研究においては、酸化物原料として「ナノ粒子」を用いることにより、(1)表面積のさらなる向上、(2)無電解還元時間の短縮化、および(3)合金組成の均一化を検討したい。ナノポーラス合金は、大きな比表面積を持ち、電解コンデンサの容量を飛躍的に増大させる。また、還元時間の短縮化は工業化、エネルギー、コストの観点から極めて重要であり、組成の均一化によりアノード酸化皮膜の均質化を実現することができる。ナノ酸化物粒子のカルシウム還元に関する研究はほとんど報告されておらず、学術的な反応挙動の検討も極めて興味深い。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は計画どおり順調に研究が進展したため、若干の予算残が生じた。 次年度のカルシウム還元における化学実験必需品(消耗品)に充当する予定である。
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