本研究においては、酸化物を金属カルシウムにより直接還元する新規なプロセスを用い、高容量電解コンデンサ用Ti-Zrポーラス合金の作製に挑戦した。前年度の研究においてTi-Zrポーラス合金の試作に成功したことを踏まえ、本年度は酸化物原料のナノ粒子化によって(1)合金表面積のさらなる向上、(2)還元時間の短縮化および(3)合金組成の均一化を試みた。 酸化物原料の平均粒子径をマイクロメートルオーダーからサブミクロン、さらに10 nm程度まで小さくしたナノ粒子を用いてカルシウム還元を行うと、酸化物粒子が微細なほど還元速度が増大し、得られた還元金属中の酸素濃度が低くなることがわかった。すなわち、ナノ酸化物粒子を用いてカルシウム還元を行うことにより、低酸素濃度のポーラス金属を高速で形成することができる。これは、酸化物粒子径の微細化によってカルシウム還元の反応表面積が増大したためである。一方、カルシウム還元により一度金属相が生成してしまうと、高温の溶融塩中ではただちに金属同士の焼結が進行するため、生成する金属のポーラス形状は酸化物粒子のサイズによらずほぼ一定となることがわかった。ナノサイズのTiO2-ZrO2混合粉末を用いてカルシウム還元を行うことにより、組成均一性に優れたマイクロポーラスTi-Zr合金を作製することができた。このようなマイクロポーラスTi-Zr合金をアノード酸化することにより、革新的な電気容量を持つ新規電解コンデンサを作製できる。
|