研究課題/領域番号 |
25630334
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
平井 伸治 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10208796)
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研究分担者 |
葛谷 俊博 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00424945)
山内 見和 國學院大學栃木短期大学, その他部局等, 教授 (40299821)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 繊維廃棄物 / リサイクル / シルク / 粉砕 / 分離 / 回収 / 再生用途 |
研究概要 |
交撚糸,混紡糸からのシルクの分離・回収を行った。シルク交撚糸(60 %シルク-40 %キュプラ)とシルク混紡糸(50 %シルク-50 %エステル)について遊星型ボールミル(アルミナ製容器(500 ml),アルミナ製ボール(φ30 mm,全量3.4 kg))を用い,300 rpmの回転数で1分間の粉砕を行い,その後,5分間静置する操作を10回繰り返した。続いて,200 meshの篩を用いた篩分けを行ったところ,篩下の粉末はシルクのみであった。 一方,交織織物についてはシルクがUVと酸素により脆化することを利用し,UVを照射後,粉砕と篩分けを行うことによりシルク粉末を回収した。交織織物(47 %シルク-53 %レーヨン)にUVを酸素雰囲気中60分間照射し,続いてローラー上で粉砕容器が回転する簡単な卓上型ボールミル(アルミナ製容器(1000ml),アルミナ製ボール(φ10mm:20個,φ20mm:20個))を用い,700 rpmの回転数で10分間~6時間かけて粉砕を行い,続いて篩分けを行った。紫外線を照射すると,わずか10分間で粉末と糸状の繊維に分かれ,篩下の粉末はシルクのみになった。この他,同じ交織織物について,オートクレーブを用いた蒸煮処理後に粉砕と篩分けを行う方法でシルク粉末を回収した。綿や麻は湿潤すると引張強度はわずかに増加するが,反対にシルクは減少することを利用した。蒸煮処理は,2種類の交織織物(50%シルク-45%綿-5%ポリウレタン, 50%シルク-50%麻)についてオートクレーブ中180℃,3.5MPaの加圧下で30分間保持することにより行った。粉砕は,遊星型ボールミル(アルミナ製容器(500ml),アルミナ製ボール(φ20 mm,全量3.4 kg))を用い,交撚糸や混紡糸の場合と同じ条件で行い,最後に篩分けを行った。蒸煮処理を施すと篩下の粉末はシルクのみになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,金属製錬における選鉱技術の一つである浮遊選別法を取り入れた繊維製品廃棄物からのシルクや動物毛などの動物繊維回収プロセス,および回収された動物繊維からバイオプラスチックを作製するための要素技術の開発するものである。リサイクル後の有効利用の研究も同時に行い,繊維製品のリサイクルの必要性を明らかにしようとするものである。当初の研究計画では,浮遊選別を利用した動物繊維の回収を想定していた。しかし,平成25年度の研究により,交撚糸,混紡糸については簡単なボールミルによる粉砕,交織織物については紫外線照射後あるいはオートクレーブを用いた蒸煮処理後にボールミルを用いた粉砕を行うことによりシルクのみが粉砕されることが明らかになった。結果的に簡単なプロセスによりシルク粉末のみを回収することができ,目的が達成された。
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今後の研究の推進方策 |
ラピッドプロトタイピングの一つである粉末積層造形において従来のナイロン12の代わりにこの樹脂の微細粉末を用いることが可能になる。この造形が開始すると,装置は0.1~0.15mmの厚みで,スライスデータの一枚ずつを造形用ボックスに敷き詰め,レーザーがスライスデータで指示された箇所に照射することで,溶融し固められる部分と,粉末のまま残る個所ができる。この粉末が,上部の硬化した部分を支えることで,精細な中空形状も実現することが可能となる。また,この繰り返しにより,高精度で精密な模型が完成する。ナイロン12の代わりに動物タンパク質由来の樹脂粉末を用いた場合,190 ~200℃付近にガラス転移温度があることから,粉末にレーザーを照射することにより,粉末は溶融し再び樹脂化することが可能である。ナイロン12の熱膨張率は120×10-6/K,ガラス転移温度は170~180℃,熱伝導率は0.22W/(m℃)であり,とくに熱膨張係率が小さく,熱伝導率が大きな羊毛樹脂に代えることにより,加工の段階で最終製品に近い形状を得ることが可能なニアネットシェイプの造形を行うことができると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は浮遊選別装置の試作して動物繊維のみを回収することを計画していた。しかし、浮遊選別を行う必要もなく、簡単なボールミルによる粉砕と篩い分けにより選別が可能でることがわかった。今年度は、篩い分けをより精度良く行うために、選鉱技術の中の静電選別を行う予定であり、その電源購入に充当したい。 静電選別のための電源購入を計画している。
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