研究課題/領域番号 |
25630335
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森田 一樹 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00210170)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シリコン / ボロン / 反応性フラックス / 太陽電池 |
研究概要 |
塩化物含有フラックス中のボロンの揮発性を確認するため、B2O3とCaCl2を1300℃で溶融保持し、発生するガスをアルカリ水溶液中に捕集し分析を行った。B2O3単独で溶融した際には見られない量のボロンが検出され、CaCl2とB2O3とのによるガス種の生成蒸発反応が確認された。また実験後の試料のX線回折測定の結果、新たなピークは認められず、凝縮相として化合物の生成はなく、熱力学計算予測から、BOClのガス種が発生したものと予想された。 このことから、溶融シリコンの脱ボロンスラグ処理において、塩素ガスを用いずにフラックス中に存在するボロンの揮発除去を行える可能性が明らかになった。 引き続き、実際のスラグ処理を想定し、CaO-SiO2系スラグにCaCl2を含有するフラックスの実用可能な組成範囲を明らかにするために、シリコンの融点以上である1450℃においてCaO-SiO2-CaCl2系フラックスの相平衡測定を試みた。同温度での液相領域を明らかにするため、各酸化物の飽和溶解度を測定した。塩化物(CaCl2)の蒸発が激しく、実験中に組成変動が大きいため、正確な溶解度線を得られてはいないが、大凡の液相範囲は予測可能となった。 上記で明らかにした液相領域内の組成で、同スラグを用いたシリコンからの脱ボロン実験を試みた。現在再現性を確認中であるが、シリコン中のボロン濃度は大きく低下するものもあり、スラグ/シリコンの重量比が1:1の場合、数分の1まで低下した、ボロンのスラグ/シリコン分配比としては1前後で高くないことから、ボロンは酸塩化物として気相中に除去されたものと判断され、反応性フラックスによるシリコンからの脱ボロンプロセスの可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小規模実験では反応性フラックスによるシリコン中ボロン除去の可能性が示され、当初の初年度目標を達成できた。反応の再現性とスケールアップの可能性についてにはまだ不明瞭であるが、次年度課題として明らかにできるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、反応性フラックスによる脱ボロン効率を系統的に組成を変えて明らかにし、分配比から熱力学解析を行うとともに、再現性を確認する。分配比による熱力学的観点と、酸塩化物によるボロンの蒸発除去挙動の速度論的観点から、実際の処理に用いるフラックス組成の最適化を行うことを第一目標とする。 次に、プロセスへの実用化を念頭に、グラムレベルから百グラムレベルへのスケールアップを目指す。現有の電気抵抗炉では十グラム程度での実験が限度であるが、高周波誘導加熱炉を用いて100g以上のシリコンを反応性フラックスとともに溶融し、その脱ボロン挙動について調査を行う。 以上の、得られた結果から、反応性フラックスによる新たなシリコン中ボロン除去プロセスを提案し、その物理化学的機構を明らかにするとともに、最適プロセス条件を示すことを最終目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
1年目の小規模実験は予定通り進んだが、その結果を受けて規模の大きな試験を行うにあたり、炉の改造とより多くの資材を必要とするため。 100グラムレベルの溶融シリコンをフラックス処理できるようなセットアップを作製するための材料、実験器具、また実験に必要な各種消耗品の購入を行う。
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