研究実績の概要 |
燃料電池の正極では、酸素還元反応の触媒として白金が使用されている。しかし、白金はコストと資源量の問題から新しい触媒系の探索が進められており、代替触媒の候補として、ナノクラスター触媒が注目されている。バルクからナノクラスターとなることで、非連続的な物性の変化が現れ、従来知られていない新たな触媒性の発現が期待されている。本研究では、「触媒探索の指針設計」の構築を目的として、分子軌道計算を用いてナノクラスターの触媒性を明らかにする。本研究では、金、白金等の貴金属および鉄、ニッケル、コバルト等の遷移金属元素についてクラスターの電子状態を評価した。非経験的分子軌道法計算ソフトウェア “Gaussian09”を用い、金属には基底関数としてLanL2DZ 等を用い、O, H 等の軽元素には、6-311+G(2df, 2p)を基底関数として用いた。本研究では、ナノクラスターの構造安定性を解析し、安定化した対称性の低い構造での電子状態評価と酸素吸着状態の評価を行った。白金は、フェルミエネルギー近傍の状態密度が大きく、酸素吸着を行うと、白金の非占有軌道が酸素と反応し、反結合性軌道が非占有軌道に存在することが分かった。また、酸素と白金の間の電子が非局在化することを明らかにした。これらは、金や銅においては見られず、酸素還元反応に対する白金の触媒性に寄与するものと考えられる。また、以上の知見から、複数の成分による合金構造、コアシェル構造を作製して、白金の電子状態および酸素吸着時の電子状態を目指した材料設計を行い、それらの解析を行った。
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