研究概要 |
リチウム/空気電池の革新的な正極を創製することを目的とし,イオン液体ゲルをバインダーとして用いた電極を作製した..イオン液体ゲルのガスの選択性, 高溶解性・拡散性, 高イオン伝導度といった特徴により, バインダー内における酸素の選択的な溶解, 拡散, 電解質からのリチウムイオンの移動経路などの機能性を正極が持つことが期待できる.これらの機能性により, 酸素, Li+, 電子の接触が, 従来の正極における空気相/炭素相/電解質相の三相界面での接触から, イオン液体ゲル相/炭素相の二相界面での接触に変わり, 電極反応の効率化が期待できる.本研究では,このような効率的な正極を作製する上で,超臨界二酸化炭素による含浸・乾燥を利用した方法を適用した.炭素微粒子であるカーボンブラックを分散させた溶液を調製し,カーボンシート上に塗布し,超臨界二酸化炭素中において乾燥を行った.その後,超臨界二酸化炭素中においてイオン液体の含浸を行った.作成した正極について,電気伝導度の測定を行った結果,超臨界二酸化炭素中における含浸過程でのイオン液相に対する二酸化炭素の溶解度が増大するにともない,電気伝導度が増大することが確認された.イオン液体相における二酸化炭素のモル分率が0.8付近となる条件での超臨界含浸において作製した正極について,カーボンのみの正極と同等の電気伝導度を示すことが確認された.これは,イオン液体相に超臨界二酸化炭素が溶解することにより,イオン液体の粘性が低下し,カーボンシード上に均一に分散し,イオン液体の偏在化が抑制されたためであると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,イオン液体ゲルをバインダーとして用い, 酸素, Li+, 電子の接触が, 従来の正極における空気相/炭素相/電解質相の三相界面での接触から, イオン液体ゲル相/炭素相の二相界面での接触に変わることで電極反応の効率化を達成する正極の創製を目的としている.イオン液体ゲルの機能性を利用することで,電極反応の効率化が期待できる一方,イオン液体は粘性が高いことから,電極への塗布・含浸過程において,イオン液体の偏在化が生じ,電極の電気伝導度が低下することが懸念される.そこで,超臨界二酸化炭素を含浸溶媒としたイオン液体の正極への含浸を利用することで,イオン液体相へ二酸化炭素が溶解し,イオン液体の粘性が低下し,カーボンシード上に均一に分散し,イオン液体の偏在化が抑制される効果が確認された.これらの成果は,上記の多機能性を有するイオン液体ゲルを,炭素微粒子のバインダーとして利用する際に大きな障壁となっていた,イオン液体の偏在化による電極の電気伝導度が低下といった問題を克服できるため,本研究課題で提案するイオン液体ゲルバインダーを有するリチウム/空気電池の正極を作製する点において重要な知見となることが考えられる.以上より,イオン液体ゲルを,正極上の炭素微粒子のバインダーとして利用する上での問題点を解決する手法・知見を蓄積していることから,研究の達成度は順調に進展している.
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