研究課題/領域番号 |
25630346
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
滝嶌 繁樹 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10188120)
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研究分担者 |
春木 将司 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教(Research Associate) (90432682)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超臨界流体 / 金属薄膜 |
研究概要 |
2013年度は、主として、金属錯体の昇華圧測定と解析、ならびに流通法に基づく超臨界成膜装置の作製と、水素を還元剤とした銅錯体からの銅薄膜成膜による装置・手法の健全性評価を行った。 まず、昇華圧測定では流通式の測定装置を用い、マンガン錯体ならびに亜鉛錯体などの昇華圧を測定し、新規にデータの蓄積を行った。さらに、本測定結果および既往の研究より得られたデータを利用し、ベータジケトナート系金属錯体の分子構造と昇華圧の関係について検討した。 次に、成膜装置作製では、バッチ法ならびに流通法のどちらの方法においても成膜可能な装置を設計・作製した。成膜反応器は、バルク中での金属錯体の分解を避ける必要があるため、反応器を比較的低い温度に保ったまま基板のみ局所的に高温に加熱し、基板表面のみで成膜反応が進むcold-wall型を採用した。一方、流通式の場合の原料供給については、二酸化炭素供給ラインに、空気恒温槽で温度制御可能な前駆体溶解セルを設置し、恒温槽の温度を調整することによって反応器へ供給される前駆体量を調整できるものとした。一方、還元剤である水素は前駆体供給ラインとは別のラインを設けることによって、超臨界二酸化炭素と混合し供給するものとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
溶解度推算に必要となる昇華圧データを蓄積するとともに、これまでに論文等で報告されているデータを用い、錯体構造と昇華圧データの関係について検討した。その結果、既存の昇華圧計算方法に比べ簡便な方法でベータジケトナート系金属錯体の昇華圧を計算する方法提案できた。 さらに、超臨界成膜については、既往の研究と同様、本研究で作製した装置により超臨界二酸化炭素中において銅薄膜を作製できた。また、成膜後の反応器内に超臨界二酸化炭素バルク中で反応した銅化合物の堆積は見られなかったことから、本装置の設計目標通り基板表面のみで還元・成膜反応が進行していることが確認された。得られた薄膜をX線回折装置(XRD)で分析した結果、純粋な銅に帰属するピークのみ観察され、酸化銅等の他の銅化合物に帰属するピークは見られなかった。 以上のように、超臨界成膜プロセスの設計に必要となる前駆体の熱物性データの蓄積ならびに解析、および成膜装置の作製を順調に遂行できたことから、本課題は概ね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は複合膜薄膜の成膜条件と膜特性の関係について検討する。対象とする薄膜は、シリコン基板上での銅配線のバリア層として注目されている銅-マンガン薄膜とする。操作条件は、圧力、成膜温度ならびに原料組成とし、さらに成膜には、バッチ法ならびに流通法の両方を用い、前駆体供給方法の違いによる成膜機構の違いについても検討する。 膜特性については、走査型電子顕微鏡(SEM)、スパッタ付きX線光電子分光分析(XPS)ならびにXRDによって評価する。つまり、SEMによる膜表面ならびに断面形状の解析、XPSによる深さ方向の組成均一性評価、さらにXRDにより結晶構造を解析することによって、適切な操作条件を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品の購入の際に当初の見積り額と実際の価格との差が生じたため。 消耗品(配管材料等)を追加して購入する。
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