研究課題/領域番号 |
25630348
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
飯村 健次 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30316046)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 色素増感太陽電池 / 酸化チタン / エネルギー |
研究概要 |
平成25年度においては、二酸化チタン光触媒繊維の紡績ならびに織布化を行い、織布を正極とする色素増感電池の評価を行う予定であった。本研究の最大の特徴は、得られる繊維が柔軟であり相当程度の機械的加工に耐えうるということである。二酸化チタンに10 モル%程度の少量のシリカをドープした柔軟性に富む繊維の作製に成功した。本申請課題により,これまで取り組んでこなかった,複数の単繊維を紡績により撚り合わせ強度を増すとともに,その後の織布工程により織物として加工することを目指すしたが、繊維強度を増すために添加したシリカにより表面電位が負となり当初予定していたルテニウム色素を吸着しにくくなるという傾向が見られたため、助剤量を抑制し不織布のままで、太陽電池セルを作製しその性能評価を行うにとどめた。 太陽電池セルの作製に当たり、不織布を導電ガラス間に挟むだけと言う簡易な作製プロセスに挑戦した。性能については、ソーラーシミュレータによる光照射時のIV特性をIV-カーブトレーサーにより測定した。得られた発電効率は最高で0.8%程度と決して高くはないものの、簡易なセル作製プロセスによっても太陽電池として動作しうることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非常に短い繊維(ウィスカー)を電極材料として用いようとする試みは散見されるものの、長繊維をそのまま挟み込んで電極とするような太陽電池セルの概念はこれまで提案されてこなかった。現時点でもそのようなメカニズムを持つ太陽電池セルを具現化し、簡易に作製するという面においては、当初計画を上回る進度で進行していると言える。しかしながら、吸着させる色素との相互作用に問題があり、想定した発電効率よりもかなり低い値にとどまっており、今後更なる性能向上を図るためには繊維-色素間の相互作用の最適化が必要であることがわかった。 また、同様に色素との相互作用の問題から助剤を添加できる量が極めて低く機械的強度を損なっており、大きな目標である織布化に至っていないため、織布化し、より簡易なセル作製を達成する目標については同様に未達成であり、これについては反省すべき事項であると考えている。撚糸・織布に向け一層の機械的強度向上を目指す必要があることが明らかとなった。このためには、最適化により性能を損なわない条件に置いて助剤組成を増加させ繊維強度を向上させる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
発電効率の向上並びに繊維の機械的強度向上のために不可欠な助剤添加を可能とするために、色素吸着メカニズムを詳細に検討し、より相互作用が強い色素を探索する。場合によっては、繊維表面を改質することで、化学吸着を促進させ相互作用の向上を図る。上記最適化が達成されたならば、紡糸助剤の添加効果により撚糸並びに織布が可能となる機械的強度を担保でき、かつ現段階よりも飛躍的な発電効率の増加を期待することが出来る。 上述の平成25年度における問題点を解決する事項の他、平成26年度以降は、当初の計画に基づき、残留エトキシ基を機能性末端基を導入し他エネルギーデバイスへの応用可能性について検討を行う予定である。 ①リン酸銀繊維・織布:未反応基にリン酸基を導入し、さらに銀イオンを付加することでリン酸銀を表面に嘆じさせることを試みる。リン酸銀は,極めて高い量子収率で可視光励起し,犠牲剤なしに水を完全分解可能な夢の材料と言われている。焼成条件等を最適化することで、水素発生触媒として機能する繊維を作製し、同様に織布化する。性能については、水素発生量を評価することで検討する。 ②プロトン導電性繊維・織布:導入する酸基を硫酸基に変え,そのプロトン伝導性について検討することを目指す。性能については燃料電池評価用セルを用い評価を行う。 ③超伝導体コイル:より複雑な系として超伝導体の繊維化ならびに紡績繊維による超伝導コイルの作製を目指す。小型超伝導コイルの実現は、即超伝導磁石の民生品への応用へとつながるものであり、液体窒素温度で動作する超強力超伝導磁石を用いた種々の工業製品の登場が将来的に見込める。
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