本申請課題は、高分子助剤を用いない種々の純粋無機系の金属酸化物繊維を作製し、デバイス化を試みることを目的としたものである。当該3年度の成果についてまとめる。 平成25年度においては、当初計画に基づき、2酸化チタン光触媒を色素増感太陽電池の光電極として応用することを試みた。2酸化チタンに10モル%程度の少量のシリカをドープした柔軟性に富む繊維の作製に成功した。一方で、表面の電位がマイナスとなりルテニウム色素を吸着しにくくなるという傾向を見出した。そこで、繊維強度を向上する方針を修正し、より助剤濃度を低減化し太陽電池セルを作製し評価を行った。作製したセルは不織布を導電性ガラスに挟むだけで焼き付け処理が不要となる新しい形態であり、極めて新規性の高い成果であるといえる。発電効率についても約1%と決して高くはないもののこのような形態の太陽電池セルでも作動しうることを明らかにした。 平成26年度においては、当初計画に基づき、リン酸銀繊維の作製とその性能評価に取り組んだ。ゾル―ゲル法に立脚したプロセスであることに由来し、未反応のエトキシ基をリン酸により処理することでリン酸基を導入し、さらに銀イオンと反応させることで、リン酸銀を表面に担持することに成功した。ギ酸、酢酸プロピオンさん、酪酸等のカルボン酸を犠牲剤として用いることで、可視光照射下で有機色素を分解しうることを見出した。 平成27年度においては、繊維の脆性に起因する加工の困難さを改善するために、当初計画を大きく変更し、2酸化チタン繊維を強度の高いガラス繊維と混合し、抄紙(紙漉き)することで十分な加工性を有するフィルターを作製し、PM2.5捕集フィルタに捕集物を分解する機能を付与することを試みた。評価の結果、結晶性を有する2酸化チタンの含量が高い繊維では、分解性能を有し、実用化が見込めることを明らかにした。成果は特許出願予定である。
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