ゼオライトのイオン交換サイトにヘテロ原子を担持することで,ゼオライトに様々な活性を賦与することができる.一方,反応中に担持金属成分のシンタリングが容易に進行することが問題である.そこで,超微粒子状金属触媒成分をゼオライト結晶内に内包させる方法を着想した.本研究では,ゼオライト結晶によって金属超微粒子が被覆された,鳥籠型(バードゲージ型)ゼオライトの新規合成法の開発である. ロジウム(Rh),白金(Pt),金(Au)の各超微粒子をエマルション中で作製し,同超微粒子がゼオライトによって包接されたバードゲージ型ゼオライト合成を検討した.各貴金属超微粒子が分散したエマルション溶液にゼオライト合成用のシリカ源と構造規定剤を投入し,水熱合成を行った.バードゲージ型ゼオライト合成における重要な点は,金属超微粒子とゼオライトを含むシリカ種の親和性であり,エマルション中の超微粒子を厚さ数nm程度のシリカで被覆した後,ゼオライト原料を投入し,水熱合成することで,バードゲージ型ゼオライトの合成が可能であることを見出した.同法により,粒子サイズ約2~3nmのRh超微粒子やPt超微粒子を内包したMFI型ゼオライトの調製に成功した.一方,Auに関しては,ゼオライト層の形成は可能であるが合成中に金微粒子の凝集が観察された.また,ゼオライト層の構成元素としては,Siと酸素以外にAlとFeの導入が可能であることを明らかにした. 熱的安定性の評価として,Rh超微粒子内包バードゲージ型ゼオライトを500℃~700℃で焼成し,ロジウム粒子径を透過型電子顕微鏡で観察した.その結果,ロジウム粒子径は焼成前とほぼ同じであり,優れた熱的安定性を示した.ロジウム超微粒子内包バードゲージ型ゼオライトによる芳香族の水素化反応を実施したところ,同触媒は水素化能を有することが示された.
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