研究実績の概要 |
近年、CIS系化合物半導体太陽電池の更なる効率向上のため、色素増感太陽電池に採用されている3次元的pn接合を用いた、3D-CIS太陽電池が研究されている。先行研究ではCuInS2光吸収層の成膜法にALD(Atomic Layer Deposition)法やスプレー成膜法が用いられているが、TiO2多孔質膜の深部へのCuInS2光吸収層の成膜が困難であり、理想的な3次元接合の形成を可能とする、浸透性に優れた成膜法の開発が求められていた。 このような背景の下、我々は、埋め込み特性に優れる超臨界流体を3D太陽電池構造作製プロセスに適用することによる、真の3D-CIS太陽電池構造の実現と、それに伴う変換効率の向上を最終目的とした。 本研究では、超臨界流体成膜法により、TiO2粒子で構成された多孔質膜内部に、均一にCu,In膜を成膜することを可能とした。さらに高い溶解性と還元力を有する超臨界エタノールを反応場として用いることで、従来の毒性の高いカルコゲン(セレン・硫黄)原料を代替する安全・安価な固体原料(SeO2、硫黄単体)を用いたカルコゲン化反応プロセスを構築した。 これら、超臨界流体成膜法によるCu, Inの2段階成膜、超臨界流体硫化という2プロセスを段階的に行うことで、最終的に粒径25nmのTiO2粒子で構成された多孔質膜へ、組成・構造制御された化合物半導体CuInS2を埋め込み成膜することに成功し、高変換効率の実現が期待される3次元接合型CIS化合物半導体太陽電池構造を具現化できることを実証した。
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