研究概要 |
本研究では、金属酸化物ナノ結晶が複合化して形づくるポーラス規則構造を合成することを目的としている。そこで本年度は、まず分子構造の両端に酸化物との親和性が高い官能基を持つ有機分子の存在下でナノ結晶を合成することで、ナノ結晶が比較的密に規則配列した構造の形成を試み、これに成功した。続いて、この密な構造が形成されるメカニズムを解明し、疎な構造を形成するための指針を得るために、これら有機分子の存在下で金属酸化物ナノ結晶が合成される際の合成機構の解明をXAFSを用いて行った。対象とする元素種をCeとし、CeO2, Ce(NO3)3, Ce(OH)4, ステアリン酸Ceなどの様々なCe種の標準試料を測定すると共に、有機分子の存在下で合成したCeO2の測定を行った。その結果、オクタン酸などのカルボン酸の存在下で硝酸セリウム水溶液を加熱すると、Ceイオンがオクタン酸由来のカルボキシレートと反応し、3価のままカルボキシレートと反応したオクタン酸セリウムないし類似した構造がまず形成され、さらに高温になるとこの分子が分解することで4価の酸化セリウムが合成されることが明らかとなった。一方、水溶性のカルボン酸を用いた場合は、水が配位したCe3+イオンがCe(OH)4を経由してCeO2となり、その表面にカルボン酸が結合することで有機分子が複合化したナノ粒子が生成されることが明らかとなった。これより、疎な構造を形成するためには、合成温度をやや低くして酸化物表面と有機分子の結合形成を抑制するか、立体障害など別の因子を用いて密な構造の形成を抑制するという指針を得た。
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