本年度は、2つのアプローチにより規則的ポーラス構造を持つ金属酸化物の合成を行った。まず、酸化セリウムナノ結晶表面と強い親和性を持つカルボキシル基を複数持つアミノ酸を利用して、ナノ結晶の合成場における複合化に挑戦した。硝酸セリウム水溶液をアスパルギン酸ないしグルタミン酸と共に250~300℃で加熱すると、1次ナノ粒子が集積した構造が形成された。反応時間が0.7秒の時は形状は球形であり、反応時間を8秒程度まで変化させると集積構造は立方体へと変化した。X線回折パターンより、反応時間によらず1次粒子径はほぼ20~25 nmであった。従って、セリウム水溶液の水熱反応により酸化セリウムの1次粒子がまず合成され、これが乱雑に集積した球形構造がまず形成されるが、反応時間が長くなると徐々に向きを揃えて規則的に配列することで、立方体の複合構造が形成されたと考えている。1次粒子は正8面体と予測され、規則集積構造を形成することでナノ結晶間に空隙が存在すると考えられる。しかしこの空隙の割合は小さいため、他の手法によるポーラス金属酸化物の合成にも挑戦した。これまで、ポーラスシリカは有機分子などのソフトテンプレートを用いて合成が進められていた。そこで、シリカ以外の酸化物について、同様のポーラス構造の合成を試みた。チタニアや酸化ジルコニウムなどを対象とし、ポーラスシリカと同様に有機分子をソフトテンプレートとして用いて規則的ポーラス構造を持つ金属酸化物の合成を試みた。その結果、合成場の工夫により規則的ポーラス構造を持つ酸化ジルコニウムの合成に成功した。
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