研究課題/領域番号 |
25630358
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
野田 優 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50312997)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 単層カーボンナノチューブ / 火炎合成 / 連続合成 / 化学気相成長法 / ナノ粒子触媒 |
研究概要 |
火炎合成装置への管状炉併設と合成検討:既有の火炎合成装置では、内径1 mmと非常に細い予混合火炎バーナーを用いていたため、火炎の下流にてCVDガスと混合後にも温度が連続的に低下してしまい、CNTの成長を継続できなかった。そこで、火炎の下流に電気炉を併設して温度低下の抑制を試みたが、高温帯の滞留時間の増大による煤生成も顕在化した。より緻密な合成条件の制御が必要と判明した。 火炎合成装置のスケールアップ、三重管バーナーの開発と合成検討:既往の火炎合成装置では火炎が小さいため、周囲への放熱により急速に温度が低下してしまった。そこで、バーナー径を2倍にしテーパーも併用することで、ガス流量を4~8倍に増大、燃焼熱を増やし望まない冷却を抑制した。また、既存の火炎合成装置では、予混合火炎で分解・生成するFe蒸気を、CVD原料ガスと混合・冷却して、Fe触媒粒子を形成していたが、生成初期の微小なFe粒子の炭化失活が生じていると疑われた。そこでバーナーを三重管構造に変更、内管の予混合火炎でFe蒸気を発生させ、中管のArガスとの混合で1000~1500℃へ冷却してFe粒子を形成し、その上で外管のCVD原料ガスと混合してCNTを合成する方式に変更した。これらの改良により、単層CNTをより再現良く合成できるようになった。 合成したCNTの評価:既有の走査型電子顕微鏡(SEM)-エネルギー分散X線分光(EDS)を用いてCNTの構造とFe/C比等の組成を、また透過走査電子顕微鏡(STEM)モードにてFe粒子と煤粒子の判別を、またレーザー顕微ラマン分光装置にてCNTの結晶性と単層/多層の判別を行い、単層CNTの生成を確認している。また、直径数nmのFe粒子が狙い通りに形成できているものの、ほとんどが炭化失活していることが現状の課題と判明、その対策を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単層CNTの収率に関しては、残念ながら向上できていない。一方で、火炎合成装置への電気炉併設による検討は予定通り進捗している。更に、バーナーのスケールアップを前倒しで実施し、3重管によるより精緻な制御は新規に着手している。全体的にはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
スケールアップした三重管バーナーに電気炉を併設すべく、独自設計の石英反応管を発注済みであり、納入し次第、検討を開始する。また、単層カーボンナノチューブの収率がある程度向上した段階で、浮遊触媒CVD法で実績のある硫黄系助触媒の検討を再開、加速したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請額500万円から採択額は310万円と大きく減額され、次年度の予算が200万円から120万円と減り不足を生じてしまっていた。一方で、今年度は火炎合成装置の改良において、石英ガラス製の三重管バーナーを新たに考案、安価に導入できたため余裕を生じた。そこで今年度の予算を次年度に回し、次年度に十分な予算で検討できるようにした。 本研究では装置構成により大きく成果が変わるため、実験装置のエキスパートをエフォート管理で部分雇用している。加えて、物品費と旅費への支出を予定しており、今年度からの繰り越し分を合わせて丁度足りる計画を立てている。
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