研究課題/領域番号 |
25630364
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
馬場 俊秀 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (50165057)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | Y型ゼオライト / 温度可変1H MAS NMR / 酸強度 |
研究概要 |
これまでの研究によって申請者が設計制作したNMRプローブを用いて,従来測定が困難であった400℃での固体高分解能1H NMR (1H MAS NMR)スペクトル測定が可能となった。また,測定温度が変化すると,プロトンのケミカルシフトの値が変化することも明らかになっている。一方,プロトン交換ゼオライトを触媒としてブタンやペンタンなどのアルカン分解を行なうと,酸強度の強い触媒を用いる程,反応の活性化エネルギーが小さくなることも,既に報告がなされている。このことはゼオライトの酸強度が強い程,ゼオライトの酸性プロトンがアルカンに容易に付加できるためであると考えられる。つまり酸強度が強い程,ゼオライトの酸性O-H基の結合が解離し易い(O-H結合の結合エネルギーが弱い)ことになる。 ここで,室温で区別できた異なる種類のプロトンは,アルカン分解反応の温度領域では,それぞれの間で交換を起こしている可能性がある。こうしたプロトンの動的挙動はNMRスペクトルの線形の変化に現れる。そこで開発した測定法を用い,本年度は温度の違いによってスペクトルの線形が変化することに注目した。 上記の現象に基づいて,本年度はプロトン交換のし易さが酸強度の変化や触媒活性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。具体的にはスペクトルの線形を解析することで,二種類以上のプロトンが存在するゼオライトのプロトン交換速度,および交換の活性化エネルギーを測定した。 25年度の研究だけではプロトン交換速度,および交換の活性化エネルギーやケミカルシフトから推定される酸強度と触媒活性との関係は明らかにできなかった。そこで次年度はこの点について研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度,二種類のイオン交換サイトを持つY型ゼオライトを試料に用いた。ここで,プロトン交換率が高い(30%以上)Y型ゼオライトでは二種類のプロトンが発現することを確認した。またこのH-Yゼオライトを用いたとき,測定温度がおよそ250℃を超えるとプロトン同士の交換が起こることを確認した。 しかし,プロトンの交換の起き易さと酸触媒活性との関係は明らかにできていない。それはY型ゼオライトでは,全てのプロトンが触媒として機能できないことが明らかとなったからである。この点について申請者は,研究始める前の段階から認識すべきであった。そこでこの点に気づいた後は,この問題を解決するために二種類のイオン交換サイトを持ち,しかも全てのプロトンが触媒として機能できるゼオライトとしてITQ-21 を研究対象の試料とすることにした。
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今後の研究の推進方策 |
先に述べたように,Y型ゼオライトから二種類のイオン交換サイトを持ち,しかも全てのプロトンが触媒として機能できるゼオライトとしてITQ-21を研究対象とするため,ITQ-21の合成を開始した。その結果,骨格中のアルミニウムイオンの濃度が異なるITQ-21を合成できた。骨格中のアルミニウムイオンの位置は,27Al MQMAS NMR 測定により決定した。また,申請者は温度可変 1H MAS NMR 測定法を開発しており,その測定は既に行なっている。 一方,触媒活性試験は,ヘプタン転化反応,ブタン分解反応,エタノール転化反応を取り上げ,それぞれの転化速度および反応の活性化エネルギーの測定をこれから行なう予定である。これらの実験結果を基に,プロトン交換速度,および交換の活性化エネルギーやケミカルシフトから推定される酸強度と触媒活性との関係を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、ゼオライトの温度可変NMR測定結果と酸触媒活性の測定を行った。その結果から、ゼオライト酸性プロトンが示すケミカルシフト値とその温度依存性と酸触媒活性との関係を明らかにするためには、本年度合成したゼオライトとは異なる骨格構造のゼオライトの測定が必要なことがわかった。そのため研究計画を変更し、ゼオライトの合成を行なうこととしたため、未使用額が生じた。 ゼオライトの合成とそのNMRおよび酸触媒活性の測定を次年度に行うこととし、それらに必要な消耗品費にあてることとする。
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