研究課題/領域番号 |
25630374
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
高木 昌宏 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (00183434)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 動物実験 / リポソーム / ダイナミクス / 画像解析 / 界面活性剤 |
研究概要 |
界面活性剤による皮膚への刺激性は化粧品等の開発において重要な要因の一つである。しかし、刺激性評価法には動物個体を用いたドレイズ試験など、動物愛護や個体差による誤差など多くの問題を含んでいる。我々の研究室では細胞模倣膜であるリポソームに界面活性剤を添加し、リポソームの形態変化を観察する新しい刺激性評価実験法を開発してきた。その手法を用いて、本研究ではイオン性・非イオン性・アミノ酸界面活性剤を用いて、それらの皮膚刺激性を系統的に評価していく。特に、刺激性に応じて界面活性剤が膜とどのように相互作用しているのかを分子レベルで明らかにする。そこから、界面活性剤誘起膜ダイナミクスと皮膚刺激性の相関を明らかにすることを目的とし、下記に研究項目を挙げる。 (1)リポソームを用いた動物実験代替法(多くの界面活性剤を用いた検証) (2)高刺激ダイナミクスと低刺激ダイナミクス(膜に対する界面活性剤の作用メカニズムの比較) (3)ドメインを形成しているリポソームの膜ダイナミクス(界面活性剤が与える相分離構造への影響)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膜ダイナミクスと公開されている動物実験の結果を対比させてみたところ、きわめて高い相関関係が認められている。 アミノ酸系界面活性剤に関して、企業との共同研究も成立し、多くのサンプルを入手することができるようになったこと、 さらに、培養細胞の評価結果とよく一致する結果が、開発中の動物実験代替法でも得られていることから、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
リン脂質のみから成るリポソームの系は複雑な要素を排除することで、膜が本来有している性質の影響を直接評価できるため有用である。さらに、多成分のリン脂質から成るリポソームでは生体膜中に存在することが考えられている飽和脂質とコレステロールに富んだ脂質ラフトを相分離構造として再現することが可能であり、ヘテロな構造を持つ生体膜への界面活性剤の刺激性も明らかにすることができると期待される。 本研究室の過去の研究で、非イオン性界面活性剤やイオン性界面活性剤による膜の形態変化で、ポア(膜面に形成される細孔)の形成と、ポアを形成した後のリポソームの収縮が報告された。このリポソームの収縮スピードとドレイズスコアに相関が見られた。高刺激を示す界面活性剤TritonX-100の場合は膜が揺らいだ後に陥入し、ポアが形成してリポソームが収縮することがわかった。また低刺激を示すTween20はリポソームが揺らぎながら破裂または揺らがずに破裂する挙動を示した。この事から、高刺激を示すTritonX-100と低刺激を示すTween20では膜に対する刺激のメカニズムが異なっていると考えられる。この違いを、膜の2層構造を考えながら、痛みが発生するメカニズム解析へと発展させる。
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