昨年度までに、PDMS/ガラス製流路チップ(反応流路外径6 mm、流路幅500μm、流路深さ400μm)を設計、作製した。これを用いて温度、遠心速度などオンチップDNA増幅反応の諸条件、相対重力加速度と対流速度の関係を明らかにし、結果、相対重力加速度5Gにてわずか15分でDNA増幅が可能であることを示してきた。 H26年度は、さらに安定な反応条件や検出感度などの検討を行った。PDMSはそのガス透過性の高さから、高温(95℃)にするとマイクロ流路中の反応溶液の気泡発生あるいは蒸発による液量減少によってPCRが妨げられる現象が見られた。これに対し、ミネラルオイルをPDMS内に浸透(100℃、20分間)させることで、流路中の反応液蒸発および気泡発生を防止できることを見出し、また試料等の吸着防止のため、PCR反応液にBSAおよびPVPを加えることとし、これらを流路表面のブロッキングとすることとした。本デバイスおよびヒトゲノムDNAをテンプレートに用いてβ-Actin領域のDNA増幅を行った後、チップ流路の蛍光測定より、ヒトゲノム初期濃度(12pg~12ng/chip)に対する検量特性を得ることができた。電気泳動分析により目的とするDNA増幅産物(DNA長:289bp)も確認した。検出感度は120pg/chipと高感度であった。一方、簡易操作化の検討も行った。PCR溶液3.88μL(鋳型DNAなし)を充填した流路チップを準備した。これにヒトゲノムDNA溶液または口腔粘膜サンプル液0.12μLを遠心充填し、熱対流によってPCR溶液とサンプル液を混合させ、さらに遠心促進熱対流PCRによるDNA増幅に成功した。これにより、サンプル液を注入するだけで、簡易迅速にPCR増幅が行えることを示すことができた。 以上、遠心促進熱対流型PCR法の開発に成功するとともに、その基礎条件を確立することができた。
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