研究課題/領域番号 |
25630383
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
青井 議輝 広島大学, サステナブル・ディベロップメント実践研究センター, 特任講師 (40386636)
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研究分担者 |
金本 大成 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (20260755)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分離培養 / 難培養性微生物 / 口腔内微生物 |
研究概要 |
本年度は、デバイスの開発および運用方法の確立: 様々な環境や様々な種類の生物体内に投入可能な培養デバイス、および植菌した微生物の増殖の様子を培養中にモニタリング可能な培養デバイスなど多様なタイプの培養デバイスの開発に向けた諸検討を行った。大まかにタイプ分けすると、一つは、2枚の孔径0.1 µmのアイソポアメンブレン(平膜)を用いた薄型のタイプであり、片方のメンブレンをカバーガラスに変えることで観察も可能としたタイプである。もう一つのタイプは中空糸膜をチャンバーとしたものである(Dual Gel HFMC)。両者とも微生物細胞を植菌した多数の微小ゲル粒子(GMD)をチャンバー内に封入して培養を行う。具体的には、低融点アガロースゲルを用いw/oエマルションを作成する要領で作成した微小ゲル粒子(微生物細胞が0-1つずつ封入)をアルギン酸ナトリウムゲル溶液と混合させる。その後チャンバー内に注入しアルギン酸ゲルは塩化カルシウム溶液を用いて固化させる。 上記方法により、口腔内細菌を用いてin vitro条件で培養後、EDTAを用いてアルギン酸ゲルを溶解させGMDを回収することに成功した。その際、顕微鏡直接観察によって内部にマイクロコロニーの形成を確認し、その経時変化を追跡した。また、培養を行った後のGMDの回収方法,セルソータ(FACS)を用いた2次培養操作の最適な使用条件の検討,セルソーターを用いない回収方法の確立,二次培養における培養条件(培地組成など)による影響評価などを行った結果、両者のデバイスともに分離培養を行うことが可能な条件を見出すことに成功した。またヒト細胞との共培養を行うためのデバイス開発も行い概ね運用に目途が立った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究全体の目標は、生体内で未培養細菌の分離培養を行う「in vivo培養」という全く新しいコンセプトに基づく分離培養戦略を創生・提案することである。本年度は特に、生物の体内に設置して分離培養操作が可能な,ハイスループット細菌分離培養手法を開発し様々な環境、生物種に対応可能なデバイスおよび実験方法を確立することをまず主な目的とした。 上記目標に基づいて研究の全体計画は以下の内容(項目)から構成されている、1)in vivo 培養操作、実験プロトコルの確立:既に試作済みのデバイス(Dual Gel HFMC)を用いた方法論の確立、2)口腔内細菌の分離培養と従来法や培養を伴わない手法を用いた比較解析、3)上記技術を応用したDual Gel HFMCとは異なるタイプの培養デバイスの開発:特に培養中において増殖の様子をモニタリングすることが可能なタイプの開発4)獲得した微生物の生理学的性質の解明、5)幅広い生物種を対象としたin vivo培養システムの開発。そのうち項目2)および3)はH25、H26両年度、4)、5)はH26年度での実施を予定している。 本年度は項目1)および2)の一部さらに項目3)についてH26年度に予定していることまで進めることができた。一方で項目2)については分離株の獲得には至っていないが、H26年度での実施を予定しているため、達成度を表記の通りの自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
研究の全体計画は以下の内容(項目)から構成されている、1)in vivo 培養操作、実験プロトコルの確立:既に試作済みのデバイス(Dual Gel HFMC)を用いた方法論の確立、2)口腔内細菌の分離培養と従来法や培養を伴わない手法を用いた比較解析、3)上記技術を応用したDual Gel HFMCとは異なるタイプの培養デバイスの開発:特に培養中において増殖の様子をモニタリングすることが可能なタイプの開発4)獲得した微生物の生理学的性質の解明、5)幅広い生物種を対象としたin vivo培養システムの開発。そのうち項目2)および3)はH25、H26両年度、4)、5)はH26年度での実施を予定している。 基本的には上記の項目にしたがって計画通りに進める予定であるが、それらとは別に、ヒト細胞との共培養を可能にする全く新しいタイプのデバイスを開発することを新たな項目として加える。生体内の環境、例えば口腔内は宿主の細胞や組織およびそこに生息する多様な微生物群が存在する非常に複雑な環境であるがためにin vivo培養の効果や学術的意義を評価するためにはより単純化した系が必要不可欠であることを着想した。ヒト細胞との共培養では培養デバイスの内側だけでなく外側も無菌状態で全ての操作を行わなければいけないため、現状のデバイスや方法とは異なり、デバイスの構造およびそれを用いた培養方法において抜本的な変更が必要となるが、これまで開発したデバイスおよび培養方法を基盤とすることで十分に達成可能だと見込まれる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は全体計画の中でもデバイスの開発により注力した。当初の計画では研究期間内全体で行う予定であったが、研究遂行の過程でデバイス開発はむしろ研究の前半に集中的に行い、解析や実証試験を後半に行うことにする方が効率的であると判断したためである。その結果、予算消費が大きくなる遺伝子解析やその過程で必要となる消耗品などの購入が少なくなったため、当該年度の支出が少なくなり次年度使用額が生じた。 当初の計画通り、開発した培養デバイスの実証試験などをH26年度に行う過程で、遺伝子解析や培養操作に伴う、各種消耗品や解析を外注する際に生じる経費として使用する予定である。また、各種打ち合わせなどの旅費にも充当する。
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