本年度は、ヒト以外の生物を対象とした生体内培養(in vivo培養)を可能にする新しいタイプのデバイスを開発し、培養方法を確立、実際に培養試験を行うことを新たな項目として検討を行った。ヒト以外の対象生物の体内環境や培養試験方法はこれまでに対象としていたヒト口腔内とは大きく異なる。サンプルがヒトではないために、ヒトの口腔内にデバイスを挿入するin vivo培養を遂行する場合のように制限される因子自体は少ないが、対象生物を傷つけて生体内に挿入するため現状のデバイスや培養方法とは異なり、デバイスの構造およびそれを用いた培養方法(生体内への挿入方法)において抜本的な変更が必要となったため、デバイスの大きさ、形状、構造、素材などを試行錯誤で設計段階から検討した。基本的な構造としてはこれまで開発したデバイスおよび培養方法を基盤とすることで達成した。具体的には、孔径0.1 umのアイソポアメンブレン(平膜)を両側に用いた薄型のデバイスであり、植菌したサンプルをそのデバイス内部で増殖させるものである。デバイスの素材としてソフトなシリコン素材を用いた。対象生物の体内の一部をメスで切り取りその隙間にデバイスを挿入して1次培養を行い、2次培養は1次培養サンプルを取り出して寒天平板培養を用いて行った。得られた分離株を従来法(寒天平板法に直接植菌した場合)と比較したところ、in vivo培養手法では新規性の高い分離株の割合が極めて高いことが判明した。また得られた菌株の多様性も従来法より大きく、さらに寒天平板法で得られた菌株と比較した場合同一の種類は極めて少ないことが判明した。
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