研究課題/領域番号 |
25630384
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中島 雄太 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (70574341)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞刺激 / 培養面変換 / リアルタイム細胞観察 / BioMEMS |
研究概要 |
心筋細胞分化誘導用マイクロデバイスについて、培養面への細胞の接着を阻害するアルギン酸薄膜のパターニング方法について検討した。本研究においては、今後、マイクロデバイスの製作プロセスの中に組み込むことを考慮し、一般的なフォトリソグラフィの技術と同様の工程で細胞接着阻害性を持つアルギン酸薄膜をパターニングする手法を開発した。本手法を用いることによって、様々な形状のマイクロパターンを形成できることを実証した。ただし、現時点では心筋細胞分化誘導デバイスに細胞接着阻害性を持つ細胞培養面を形成するには至っておらず、次年度に検討する予定である。 一方、フォトリソグラフィとモールディングによって製作した自己接着性を持つPDMS構造体の積層により、心筋細胞分化誘導用マイクロデバイスを実現した。本デバイスは、細胞外部からの圧縮刺激の制御により、心筋細胞へと分化誘導することを目指したものである。構築したデバイスは、マイクロ流路、圧力印加ポート、細胞導入ポート、細胞培養チャンバ、圧縮刺激用ダイアフラムから構成されており、全て透明材料で構築されているため、刺激に対する細胞の応答・挙動をリアルタイムで評価することが可能である。また、圧力印加ポートからの空気圧の調整により、圧縮刺激用ダイアフラムの変形量をコントロールすることができるため、細胞に対して動的な刺激を与えることが可能である。さらに、細胞の分化誘導に対する予備検討として、当初の計画を繰り上げて、構築した本デバイスを用いて単一細胞に対する動的な圧縮刺激実験を行った。デバイスから圧縮刺激を受ける細胞の様子を光学顕微鏡を用いてリアルタイムで評価した結果、細胞の変形挙動や細胞内カルシウム応答を評価することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標であった心筋細胞分化誘導マイクロデバイスの設計・試作・動作実験が概ね完了した。また、当初の予定を繰り上げてデバイス上での細胞の刺激実験とリアルタイム評価を実施しており、当初の予定より進展がある。一方で、デバイスの培養面に細胞接着阻害性を組込むことができていない点で課題も存在するため、達成度はおおむね順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、心筋細胞分化誘導用マイクロデバイスの培養面に細胞接着阻害性を組込むことを検討する。細胞接着阻害性材料のパターニング技術は既に開発済みであるため、この技術を使うことによってデバイスへの組込みが可能であると考えている。デバイスの完成に引き続き、当初の計画通り、細胞に周期的な圧縮刺激を与えることによって筋芽細胞から心筋細胞への分化の可否を明らかにする実験を実施する。前年度までにデバイス内での細胞の培養と刺激、刺激を受ける細胞のリアルタイム観察に成功しているため、これらの成果を基盤として具体的な条件設定を試みる。刺激を与えた細胞の細胞骨格の融合過程や細胞形態の変形挙動などをリアルタイムで観察すると共に、刺激後にはそれらを固定化し、免疫染色することによって、刺激を受けた細胞分化した細胞種を同定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
経費は予定額をほぼ使い切った。次年度使用額は前年度末に完全に消化することが可能であったが、基金分であるため繰越が可能であり、次年度の必要かつ有効なタイミングで効果的に経費を使用することができることを考慮し発生した。 研究を遂行する上で恒常的に必要な、培地や血清などの細胞培養用薬品類は生ものであるためできるだけ使用する直前で購入する必要がある。したがって、これらを適切なタイミングで購入する予定である。
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