航空量の増大に伴い空港周辺における過密状態は急激に悪化しており、遅延による燃料費の増大や環境影響が問題化している。本研究は、このような背景から様々な制約条件を満たしながら、複数機の空港進入の最適軌道を求めるアルゴリズムの開発を目的としている。平成27年度は、前年度までに得られた時空間座標系を利用した最適化の成果を発展させ、1)三次元軌道への適用、2)実データを用いた検証を主たるテーマとして研究を進めた。 1)三次元軌道への適用では、空港周辺の騒音問題に着目した軌道生成を試みた。騒音が環境に与える影響は、騒音の大きさに影響する距離と騒音の持続に影響する時間を同時に評価することが必要となる。この点に関しても、時空間座標系は両者を同等に扱うことができるので、定式化および解法が簡単になる。得られた成果は国際会議で発表しており、高い高度を維持し、継続的な降下で進入する経路が求められた。さらに、三次元軌道への適用では、複数機の編隊を変更する課題にも応用した結果も得ている。 2)実データを用いた検証では、成田を離陸する2機と羽田に到着する2機が太平洋上で交差するデータを電子航法研究所からいただき、その条件を用いて最適化計算を行った。消費燃料を評価関数として合計4機の軌道最適化を行った。軌道の制約を課したために、時間領域で接近を回避する軌道が得られた。機種によって消費燃料が異なるため、機種を変更すると回避方法が異なることも確認でき、成果を学術論文誌に投稿した。 トポロジー概念、すなわち時空間座標系を用いて空間内に最適曲線を描く軌道生成をテーマとして研究を進め、目標とした成果が得られた。将来の課題としては、曲線の始点を変更することで、順序の入れ替えができるアルゴリズムの開発が残されている。この課題の解決により、実運用に適したアルゴリズムが得られることになる。
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