本研究は、これまで主に医療関係の技術に応用されてきている水中衝撃圧を対象が大規模となる海事産業への活用を目指し、その技術展開のための先駆けとして基盤技術を確立しようとするものである。海事産業への活用のために挑戦的にクリアすべき課題は、エネルギーコストと環境への負荷の低減である。従来の水中衝撃圧の生成は、爆薬や高圧放電など高エネルギーで取り扱い上危険性が高い方法であるため、海事への有効利用を念頭に置く場合、生成手法自体を見直す必要があると共に、水中衝撃圧を減衰させずに利用するための検討が必要となる。本研究では、低コストで連続的に発生可能な水中衝撃波生成方法の確立と生成した衝撃圧の有効利用のための圧力増幅方法について検討された。磁力補助機構を有する高圧ガス駆動の無隔膜衝撃波生成装置を用いた水中衝撃波生成方法について、様々な方法で繰返し実験を実施し、最終的に水面に近接させて設置した薄膜に沿って衝撃波を入射させることで、水中衝撃波の発生を確認することができた。この結果は、高エネルギーが必要とされる水中衝撃波の低コスト生成の実現可能性を強く示唆する成果であると考えられたが、十分な強さの圧力を得ることができなかった。一方、高圧水流を用いたキャビテーション噴流の生成実験によって、微小気泡群の自己崩壊現象による断続的な水中衝撃波の発生を確認した。ノズルの吐出圧力が約6.6 MPa、1 mmのオリフィス穴径から生成されたキャビテーション気泡の平均直径は約90μmであり、マイクロバブルとしては少々大きいが、自然に衝撃波が連続発生するため、非常に効率的に微小気泡と衝撃圧を利用出来ることが見出された。さらに噴流照射対象物に対するノズルの位置関係と衝撃波の発生周期や頻度の変化について検討し、単純な構造かつ低コストの船底付着生物の除去等への応用可能性を得た。
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