研究課題/領域番号 |
25630406
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
岡村 秀雄 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 教授 (90253020)
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研究分担者 |
張野 宏也 神戸女学院大学, 人間科学部, 教授 (20291213)
段 智久 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 教授 (80314516)
浅岡 聡 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 助教 (60548981)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 次世代燃料 / 生態影響 / 排ガス / 粒子状物質 / 粒径 / 精密ろ過膜 / 限外ろ過膜 |
研究実績の概要 |
本研究では、次世代舶用燃料からの排気ガスが水生生物に及ぼす有害性を評価し、粒子状物質(PM)の有害性とPMに吸着した有害成分に関する知見を得ることを目的とした。舶用ディーゼル機関を用い、C重油および次世代燃料としてジメチルエーテル(DME)混合C重油(30%DME+70%C重油)からの排気ガスを溶液に吹き込み、①この溶液が水生生物に及ぼす有害性を評価し、②この溶液を3種類の孔径の膜フィルターで分画したろ液の有害性を評価し、③有害成分である多環芳香族炭化水素を同定した。以下に課題ごとに結果をまとめる。 ① 排ガスを吹き込んだ溶液は海産藻類に対する影響が強く、発光細菌や甲殻類に対する影響は弱く、変異原性は検出できなかった。排ガスを超純水または人工海水に吹き込んだ試料を固相抽出により濃縮すると海産藻類に対して強い有害性を示したので、有害成分は有機性物質と考えられた。次世代燃料からの排ガス試料は、C重油試料と比較すると、海産藻類に対する有害性が低かった。 ② 排ガスを人工海水に吹き込んだ試料では、孔径10 および1 μmの膜フィルターでろ過したろ液は藻類に対する有害性を有していたが、0.1 μmの膜フィルターでろ過したろ液には藻類に対する有害性が認められなかった。このことから、藻類に対する有害成分は0.1から1μmの粒子に吸着していると考えられた。 ③ 排ガスを吹き込んだ人工海水の総PAH量は、C重油よりも次世代燃料の方が高かった。C重油排ガスを吹き込んだ人工海水では、粒径0.1~1μmの画分にのみ発がん性を有するPAHsが検出され、次世代燃料排ガスからの試料には発がん性物質は検出されなかった。 以上から、C重油および次世代燃料からの排ガスを吹き込んだ人工海水は、海産藻類に対して有害性を示すが、孔径0.1 μmの膜フィルターでろ過することによって有害性を除去できることが示された。
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