研究概要 |
実際のエンジンの排気ガス温度を,時系列的に応答良く測定する方法は,今までになかった.排気弁が開いた直後の排気ガスは高い温度になっているので,例えばそのようなガスのみ分離すれば触媒活性化や熱電発電など,熱を有効に利用することが可能となる.本研究では,レーザ干渉法によってエンジンからの非定常な排気ガス温度を高応答で測定することのできるセンサを試作し,1サイクル中の時系列な温度変化を計測することを目的とする. 平成25年度は,まず,エンジン排気ガス温度の高応答計測を実施するための光学系の詳細設計を行い,試作した.次に,パイプ内にドライヤーによって温度変化を与え,変化する空気温度を測定した.熱電対によって得られる温度と比較して検証する.温度変化が急激な場合には,熱電対では応答性が悪く,計測できなくなるが,本手法では応答良く計測することができたと考えられる.ただし,他に検証する方法はない. 平成25年度には,まず高速度カメラによって干渉縞の動きを毎秒20,000駒で撮影することによって,温度分解能を向上させることを試みた.今までは,干渉縞の動きの半波長の動きしか読み取ることができなかったが,256ピクセル中に3波長の干渉縞を入れることによって,原理的には約1/80波長の動きまで計測することが可能となり,温度分解能は格段に向上した.現在は,ラインセンサカメラを使用して,毎秒210,000駒まで対応することができるようなシステムを構築中である.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,まず,エンジン排気ガス測定用光学系を試作する.平成25年度に実施したパイプ内の空気温度変化測定結果から,エンジン排気ガス測定に最適な光学系を試作する.エンジンに取り付けた場合には,振動,水蒸気,すすなど,外乱の影響をできるたけ低減させることが必要になる.場合によっては,何度か,試作を繰り返す必要があると思われる. 次に,実際にエンジンの排気ガス温度変化の時系列計測を行う.エンジンは,現在,研究室内に設置されているが,正常な運転をするためのメンテナンスが必要であるので少し時間がかかる.エンジンのシリンダヘッドと排気管の間に,上記で試作した光学系を設置する.運転条件としては,まず,比較的低速回転において,何通りかの負荷一定条件で,温度変化を計測する.本手法は,温度変化のみを計測する手法であるので,基準温度が必要になる.熱電対を排気管内に設置して,それによって得られる温度を基準温度とする.ガス温度決定のためには,排気ガスのGladstone-Dale定数が必要になるので,排気ガス組成を知る必要がある.排気ガス組成は排気ガス分析器によって,CO2, O2, HC, COの量を計測する.水蒸気の量はC, H, Oのバランスを考えて見積る.温度変化のデータは,基本的に1サイクルずつ取得することができるので,サイクル変動に関しても議論することができる.シリンダ内燃焼を表す圧力変化,その圧力変化から得られる熱発生率との関連についても非常に興味のあるところである.
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