研究実績の概要 |
初年度は,5種類の炭材にそれぞれに水酸化カルシウム,水酸化ニッケルを混合し,水蒸気雰囲気下で加熱する水素生成実験を行い,炭材の種類によって水素の発生量が大きく異なることを明らかにした.2年度目は、炭材に混合する水酸化物の種類が水素生成に及ぼす影響を検討した.実験の結果,水酸化ナトリウムと水酸化ニッケルの組み合わせが最も水素を生成する量が多いことを明らかにした.最終年度では,反応メカニズムをより明確にするために,炭材に混合する物質を一種類にし,水素の生成実験を行った.また,そのときの粉砕時間ならびに加熱温度が水素の生成量に与える影響についても検討を行った.炭材に混合する物質として酸化チタン,酸化亜鉛,酸化鉄,酸化銅,水酸化ニッケルを使用した.水酸化ニッケル以外の物質を粉砕,混合して加熱しても水素の生成量はごくわずかであったが,水酸化ニッケルを使用すると飛躍的に生成量が増大することがわかった.そこで,炭材にそれぞれニッケルメタル,酸化ニッケル,水酸化ニッケルを混合した場合を比較したところ,水酸化ニッケルを使用した場合が他のものに比べ,非常に水素の生成量が多いことがわかった.水酸化ニッケルを使用した場合,加熱過程で脱水し,比表面積が増え,反応性が向上し,それが炭材ならびに生成した水素によって還元されたニッケルが触媒として機能したものと考えられる.また,粉砕時間が長いほど,加熱温度が高いほど,水素の生成量が増大することもわかった.これらの結果から、メカノケミカル処理を用いることで,水素生成温度を大幅に低下させることに成功した.
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