幅広い塩分濃度で増殖でき,かつアンモニア態窒素に対する耐性を有する藻類株を見いだし,藻類培養への消化汚泥脱離液の利用性可能性を評価した.藍藻類A,緑藻類B,C,D,珪藻類Eの5株の塩分耐性を試験した結果,0.2‰~30.6‰においてA株及びB株の最大増殖量と脂質生産量は塩分による影響を受けないこと,それらの比増殖速度は1.4 d-1であった.さらに窒素源をNH4Clとした改変f/2培地を用いてA株のアンモニア耐性を評価した結果,両株ともアンモニア態窒素濃度0.9~57.6 mMで増殖でき,14.4 mMのときに増殖量が最大となった.さらに、両株は下水二次処理水で希釈した消化汚泥脱離液において増殖し,脂質を生産した.しかし、海水は希釈水として不適であった。また,消化汚泥脱離液にはA株の増殖を低下させる因子が含まれた.アンモニア態窒素濃度3.6 mMとなるように下水二次処理水を用いて希釈した消化汚泥脱離液での最大増殖量,脂質生産量は同アンモニア態窒素濃度とした人工培地よりも高かった.また、B株については細胞の肥大化も認められた。細胞の一方、牛舎排水、豚舎排水処理水、製パン工場の排水を用いてB株の培養を試みた結果、製パン工場では窒素源が不足していたため良好な増殖は見られなかったが、牛舎、豚舎排水処理水での増殖量は人工培地を上回った。特に下水二次処理水を用いて希釈した消化汚泥脱離液や牛舎排水にはB株の増殖を促進する物質が含まれることが示された。さらに、2日毎に2 g/LのNaHCO3を加えることで、脂質生産量は増加することが確認された。なお、アンモニア態窒素濃度3.6 mMとなるように下水二次処理水を用いて希釈した消化汚泥脱離液での培養終了時にアンモニア態窒素やリン酸態リン濃度を分析した結果、これらは検出されず、栄養塩の除去も確認された。
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