本研究では,シェールガス・オイル貯留層におけるプロパント処理亀裂の水理学特性変化の評価を目的として,高温高圧環境である地下深部を実験的に再現しプロパント供試体の長期透水試験を実施した.プロパントのみで構成される粒状供試体とプロパントを幌延泥岩で挟んだ岩石挟持供試体を対象とし,拘束圧・温度を制御した環境下で透水試験を実施し透水特性の経時変化を観察した.また,撥水処理したプロパント供試体に対しても透水試験を実施し,撥水処理の有無が透水特性変化に与える影響を検証した. 透水試験では透水性の経時変化を観察した.粒状供試体では,撥水処理の有無によっては,供試体ごとに明瞭な差異は確認できなかった.しかし90 °C条件の透過率の平均値を比較すると,Ottawa sandの方が約1オーダー程度低い結果となった.主成分がSiO2(石英)であるOttawa sandは粒子接触部で発生する圧力溶解等により,空隙体積が時間の経過と共に減少する可能性がある. 透水試験で採取した透過水を用いて,ICP発光分光分析を実施し供試体から溶出する物質濃度を評価した.粒状供試体では,Si濃度が最も高い結果となった.これはプロパントに含有しているSi元素が粒子表面より溶出したことに起因していると考えられる. 本研究では,設定した温度・拘束圧条件が中庸であったため,透過率の経時変化が大きくなく,プロパントの撥水処理効果を正確に把握することが困難であった.今後は,本研究で実施した実験条件よりも,より高温・高圧環境下で透水試験を実施することで,プロパントの長期性能を評価する必要がある.さらに,本研究で検証した透過率の予測式は一定値しか推定できず,時系列で変化する実験結果を再現できないため,予測モデルの改良が必要である.
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