研究課題/領域番号 |
25630418
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
菊池 崇志 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30375521)
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研究分担者 |
樫根 健史 弓削商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60332110)
佐々木 徹 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (90514018)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 核融合 / 慣性核融合 / Warm Dense Matter / パルスパワー / 高密度プラズマ / 高エネルギー密度科学 / 非定常熱伝導 / 放射輸送 |
研究概要 |
固体からプラズマへ相変化する領域では,固体物性やプラズマ科学のセオリーが通用せず,状態方程式や輸送特性が不明確である.この領域は,Warm Dense Matterと呼ばれているが,非常に高い圧力下にあるため,人工的に良く定義された状況で維持することは困難である.このため,定式化されていない情報が多く,慣性核融合の研究にとって重要な要素を含んでいる. 本研究では,超大出力パルスパワー装置を用いて,慣性核融合の爆縮過程と同等の時間スケールでWarm Dense Matter状態を生成し,その状態を良く計測して物性データの収集を行う.得られたデータから,数値解析へ適用できる物理モデルやデータベースを構築し,慣性核融合の爆縮過程をより精度良く解析できるようにする. 長岡技術科学大学・極限エネルギー密度工学研究センターに設置されている,国内最大の大出力パルスパワー発生装置ETIGO-IIを利用し,パルスパワー放電定積加熱により高密度状態を作り出すためのセットアップを構築している.このため,平成25年度は専用の真空容器を設計し,本予算により購入した.また,パルスパワー放電によるWarm Dense Matter生成のため,電子ビームダイオードを用いた試料への投入エネルギー制御法を新たに提案した.購入した真空チャンバーと提案した電子ビームダイオードによる投入電力制御を組み合わせ,試料を想定した模擬負荷へ極短時間にエネルギー投入を行い,Warm Dense Matter生成の実験系を構築した.同時に,試料への投入エネルギー評価のために,負荷部での電圧・電流波形計測を試みている.さらに,実験と比較した数値解析のための非定常熱伝導と放射輸送を考慮した計算コードを開発した.別の実験装置で行われたパルスパワー放電定積加熱の実験結果と良い一致を見ているため,本研究課題にも適用可能であると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超大出力パルスパワー発生装置ETIGO-IIは設置済みであるが,本研究課題に合わせた動作を可能にするため,メンテナンスを行いつつ実験条件に合わせた設定・準備を行った.次に,本研究課題の実験に合わせた真空容器の設計を行うため,従来の設備を用いて予備実験を行った.この予備実験結果に基づき,計測系も考慮した新しい真空チャンバーを設計し,本予算により購入・設置を行った.新規チャンバーを用いて,試料を想定した模擬負荷へ電力投入を行い,電圧・電流波形取得のための計測系を思案している.上記の結果より,Warm Dense Matter生成実験のセットアップ構築は,ルビーを用いた中空円筒剛体の導入を除いて,研究実施計画に基づき進められている.新たに電子ビームダイオードによる投入エネルギー制御法の提案・実験的検討も行っており,当初計画よりも成果が出ている部分もある. 数値解析のための計算コード開発は次年度の計画であったが,前倒しで進めており,実験結果と比較できる状態になっている.このため,この点に関しては,当初の研究実施計画よりも進展している. 上記の理由により,現在までの達成度としては,おおむね順調に進展していると自己評価している.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,Warm Dense Matter生成のために投入したエネルギー評価のための電圧・電流波形計測を確立させる.極短時間で高電圧・大電流を計測するため,電磁ノイズ対策を含め,容易ではないことがこれまでの実験で経験している. また,本研究課題の遂行のために,新たに提案した電子ビームダイオードを用いた投入電力制御法について,数値シミュレーションも含めて詳細を検討し,一つの手法として確立することも検討する. 次に,当初は予定されていなかった,照射実験室の改修工事が行われることになり,長期間に渡り実験ができない状況が想定される.このため,当初の研究実施計画を変更せざるを得ない状況となってきている. この実験実施が不可の期間に,今後の実験計画の再考も視野に入れ,当初の実験計画にあったルビー中空円筒剛体を用いた状態計測系の設計,数値シミュレーションによる検討を進める予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
交付申請書に記載していた物品費については予定よりも多くなったが,当初予定し交付申請書に記載していた出張旅費については他の財源・予算で執行することができ,結果として次年度使用額が生じることとなった. 当初予定し交付申請書に記載していた通り,出張旅費として執行することを計画している.
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