研究課題/領域番号 |
25630421
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松浦 秀明 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50238961)
|
研究分担者 |
片山 一成 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (90380708)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 高温ガス炉 / トリチウム / リチウム装荷法 / 核融合炉燃料 / 被覆粒子 / トリチウム透過係数 |
研究概要 |
核融合炉、原型炉用の初期装荷用トリチウムの調達法を明確にしておくことは重要である。申請者等は、高温ガス炉を用いたトリチウム生産法を提示し、炉心物理の観点からその有効性を示してきた。これまでは、炉内の中性子バランスの観点からの性能評価であったが、今後は、炉内でのトリチウム挙動を十分に把握した上で、実現可能なリチウム装荷法に基づいて性能評価を進める必要がある。 本研究では、中性子輸送計算及びトリチウム拡散実験に基づき、(a)トリチウム生産性、(b)中性子自己遮蔽効果の低減、(c)トリチウム封じ込め、(d)放出ガス圧耐性、(e)回収法との整合性、の観点からリチウム装荷方法を検討し、高温ガス炉を用いたトリチウム生産法とその性能を明確にすることを目的として実施している。 リチウム装荷法には、(1)被覆粒子を用いる方法、(2)被覆粒子を用いず円柱状ペレットとしてリチウム化合物を装荷する方法、(3)ヘリウムガスを用いたトリチウムの連続回収法、を想定することとした。(1)の被覆粒子は、(a)高温ガス炉ガスタービン発電システム(GTHTR300)概念炉標準のPyC(SiC)を母材とする粒子、(b)アルミナ及びZrC等の被覆材を用いる粒子の2種類を想定した。中性子輸送計算では、いずれの装荷法でも、熱出力600MWの小型ガス炉の180日間の運転で、トリチウム生産量として最大500g程度の値が得られた。トリチウム封じ込めデータとの整合性が次の検討点となる。 炉心でのトリチウム挙動予測に必要な水素同位体溶解度定数及び拡散係数を定量するため、二重管型流通式水素透過実験システムを整備し、黒鉛管、アルミナ管及びPyC被覆黒鉛管での軽水素透過実験を実施した。本実験によりアルミナ及びPyCは優れたトリチウム透過抑制性能を有することが確認され、黒鉛管及びアルミナ管については、溶解度定数及び拡散係数が定量された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高温ガス炉で実績のある黒鉛管、及び高いトリチウム閉じ込め性能が期待されるPyC 被覆等が施された黒鉛管或いはアルミナ管を用いた流通式水素透過実験を実施した。価格抑制のため、メーカーの製造スケジュールに合わせた試料(黒鉛管及びPyC被覆黒鉛管)の作成となったため、実験で用いた試料の入手が遅れた。PyC被覆管については、実験開始が年度末近くとなり、溶解度定数及び拡散係数の定量には至っていない。しかし実験データは取得されており、解析を進めることで速やかに当初目標を達成できる見通しである。今後、取得したデータに基づいて、トリチウム挙動予測を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定に従い、得られた実験データ(トリチウム透過係数)に基づいて、中性子輸送計算を行い、実現可能なリチウム装荷方法とその生産性能を明らかにする。PyC被覆で十分なトリチウム透過防止ができない場合に備えて、Zrを用いたトリチウム透過実験を追加する予定である。なお、アルミナ管、黒鉛管、PyC被覆黒鉛管については重水素透過実験を行い、溶解度定数及び拡散係数の同位体効果を定量することで、トリチウム透過予測精度の向上を図る。
|
次年度の研究費の使用計画 |
実験試料の納品の遅れによりデータの確定に時間を要し、成果発表旅費(参加登録費)が十分に使用できなかったため。 データを早急にまとめ、内外の関連研究者との議論、成果発表に使用する予定である。
|