福島第一原子力発電所事故により生成した燃料デブリの主成分と予想されている酸化ウランージルコニウム固溶体の安定化処理プロセス構築を目的として、選択フッ化と溶融塩電解を組み合わせたプロセスの成立性を検討してきた。本年度はとくに選択フッ化の最適化のための基礎データの蓄積を進め、種々の酸化ウランージルコニウム組成の混合物のフッ化挙動を、グローブボックス中での熱分析装置およびフッ化器を用いたフッ化により追った。熱分析により、ウランはフッ化水素ガスを用いたフッ化によって、元来高原子価状態を含むウランでも、還元フッ化によって酸化フッ化物を経由し4フッ化物となり比較的高温まで揮発しないこと、一方、ジルコニウムは低温でも4フッ化物ができ始め、350oCを超えると急激に揮発速度の増すことが分かった。同温度、同じ時間のフッ化器を用いたフッ化で比較すると、全ての組成において還元雰囲気処理の混合物の方が酸化雰囲気処理の混合物よりフッ化が速く進行し、ジルコニウムが多い組成では、その傾向差が拡大した。これらにより固溶によってフッ化が抑制されていることがわかり、デブリの還元前処理により固溶を解いてフッ化を促進しジルコニウムを選択的に揮発分離するか、酸化により固溶を進めて、ウランを酸化フッ化物に留め、ジルコニウムは酸化物のまま残し沈殿分離するか、以上の成果はその後の選択溶解、溶融塩電解プロセスデザインに大いに影響をおよぼすものとなった。
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