研究課題/領域番号 |
25630443
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
田中 耕太郎 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (60278215)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 電気化学ヒートポンプ / 濃度差電池 / ケミカルヒートポンプ / ケミカル冷凍装置 / 固体電解質 / オキソニウムイオン |
研究実績の概要 |
本研究は、電気化学反応を用いる冷凍装置、ヒートポンプの開発を研究目的としている。電気化学反応式冷凍機では、通常の機械圧縮式に替わり電解質部が圧縮機の役目を果たす。いくつかの方式が考えられるが、本研究では固体電解質を隔壁とする濃度(圧力)差利用方式が高性能となる指針をこれまでの研究より得ている。一方、室温近傍では、固体電解質をイオンとして通過し、蒸発・凝縮において相変化を行う、両過程を兼ね備える作動媒体がこれまで研究されてなかったことが課題である。本研究ではその開発に注目した。 本研究では2方式に注目し検討を進めている。1つは、圧力伝達部で作動媒体を2種類とする方式であり、他方は電解質内に2種以上の作動媒体のイオン伝導効果を用いる方法である。2014年度は、主に後者方式の電極部の基礎特性の実験的測定を行った。作動媒体には水素と水蒸気を選定し、プロトンならびにオキソニウムイオン伝導体を対象とした。この場合、水素は常に気体で相変化しないが、水蒸気成分が凝縮、蒸発して冷凍効果が生じる。パーフルオロカーボンスルフォン酸膜内系のプロトン導電膜内の、両作動媒体の移動現象を測定した。その結果、水素と伴に水蒸気の圧縮過程が測定され、また膜に凝縮水として液相を供給すると、オキソニウムイオン移動量の数倍、2-4倍程度の水分子移動を伴うことを明らかにすることができた。一方、イオン伝導率は低く、また低圧水蒸気の圧縮は水分子移動が促進されない効果も測定され、改善策の検討課題を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度の当初目標は、圧力伝達方式において、①電極部とベローズ圧力伝達部を作製すること、②小型素子の基本特性を確認すること、である。実際は、電解質内に2種以上の作動媒体のイオン伝導効果を用いる第二方式の研究にシフトして実施し、電極部の実験的な研究を進展させることができた。そのため、当初目標の②小型素子の基本特性という点では、圧縮効果を電極部で測定している段階であり、当初の予定に対して、やや遅れている、が選択される。しかし、2014年度の研究内容がシフトしたことが理由であり、実質的な成果を得ている点を考慮し、おおむね順調であると、を選んだ。
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今後の研究の推進方策 |
現在、当初の圧力伝達方式に替わり、電解質内に2種以上の作動媒体イオン伝導効果を用いる方式を主に実験を進展させており、研究計画は小型素子作製から、圧縮部性能評価に重きが置かれている。2014年度に圧縮効果が測定され、原理的な作動は確認されている。2015年度は、その性能向上の方法の可能性を探ることが、項目に加わった。電解質の材料ではなく、電極部に注目して開発していくことを今後の方策としている。また、当初の圧力伝達方式も進展させる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度当初計画では、圧力伝達方式の小型素子作製であったが、報告で述べたように、電解質内2種以上の作動媒体イオン伝導効果を用いる方式、の電極実験に重きを置いて進展させた。そのため、小型素子作製とその評価装置となる電源等は、2015年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
2014年度計画の、小型素子作製とその評価装置の構成に使用する機器は、実験結果により容量等が決定され、当初より小型電源となることを予定している。2015年度内の予算使用を必要である。
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