電気化学反応を用いるヒートポンプ(冷凍)装置の開発が本研究の目的である.電気化学反応を用いるヒートポンプでは,通常の機械圧縮に代わり電解質・電極部が圧縮機の役割を果たす.電気入力が化学反応を生じさせるギブズ自由エネルギー差であり,本研究では,固体電解質膜を隔壁とする濃度(圧力)差を利用する方式に注目した.この方式では,固体電解質膜を通過する媒体の圧力差により生じる蒸発・凝縮相変化潜熱が利用される.本研究では電気化学ヒートポンプの要素技術となる電気入力部である電解質・電極部の開発に注目した実験的研究を実施した. 2015年度の実施項目は,(1)水素圧縮電解質・電極部性能の継続的検討,(2)作動媒体を2種類とするための圧縮伝達部の性能評価である.(1)に関しては,2014年度までに実施したプロトン伝導膜の水素圧縮特性において,加湿条件が大きく測定結果に影響する点に留意し,供給水蒸気圧力の影響,ならびに水素と水蒸気の両者の膜透過・圧縮特性の測定を実施した.実験結果より,低圧側水蒸気圧力が飽和水蒸気圧以上の条件において,水素圧縮と伴に水蒸気移動量が化学当量以上となる結果を得た.水素自身の圧縮性能に関して,水蒸気圧縮は負の効果となるが,逆に圧縮伝達部を使用しない水蒸気圧縮式の高温ヒートポンプ装置の可能性が指摘できる結果をが得た.(2)に関しては,小型ベローズ・逆止弁構造を2つの作動媒体間に挟む装置を作製し,実験を実施した.切り替え周波数0.1~4Hz,2~4気圧の範囲で測定し,現状結果は入力流量に対する出口流量の比が70%程度と低く課題となる結果を得た.圧力伝達効率のより高い設計が必要である.
|