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2013 年度 実施状況報告書

マウス音声コミュニケーションの神経生物学的基盤の解析

研究課題

研究課題/領域番号 25640002
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関東北大学

研究代表者

大隅 典子  東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00220343)

研究分担者 稲田 仁  東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60419893)
吉崎 嘉一  東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50393161)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワード超音波発生 / 神経発生 / Pax6 / 小脳 / 脳幹 / 加齢 / 自閉症モデル
研究概要

齧歯類の生後期にみられる超音波発声(USV)は、母子間のコミュニケーションツールであると考えられている。我々はこれまでに、神経発生に重要な転写制御因子Pax6変異ラットにおいてUSVの減少を報告した。
本年度は、【実験1】 Pax6の発現領域を元にして、領域特異的Pax6ノックアウトマウスを作製し、USVの神経生物学的基盤の解明を目的としたが、Pax6の変異はUSVの減少に十分ではなく、父親マウスの高齢化による仔マウスのUSVの減少に対して相加的に影響することを見出した。若年齢(3ヶ月齢)のPax6変異の雄マウスから得られたPax6変異マウスは、野生型マウスと同程度のUSVを示したが、中年齢(6~8ヶ月齢)のPax6変異の雄マウスから得られたPax6変異マウスは、野生型マウスと比較して有意にUSVの減少を示した。興味深いことに、同じ父親の加齢とPax6変異の組み合わせであるが、中年齢の野生型の雄マウス(6~8ヶ月齢)とPax6変異の雌マウス(3ヶ月齢)を交配して得られたPax6変異マウスは、野生型マウスと同程度のUSVを示した。このことから、転写制御因子Pax6は父親マウスの加齢に伴う変化と相互作用することにより、仔マウスのUSVに影響を及ぼすことが示唆された。
【実験2】家族性言語障害の原因遺伝子であるFoxp2変異マウスでは小脳の低形成とUSVの減少が報告されていることから、Pax6変異マウスの小脳を免疫組織学的的手法を用いて解析した。中年齢(6~8ヶ月齢)のPax6変異の雄マウスから得られた野生型およびPax6変異マウス小脳虫部の矢状断切片を作製し、プルキンエ細胞calbindinおよび苔状線維終末vGluT1、登上線維終末vGluT2に対する免疫組織染色を行ったが、USVの異常が認められる生後6日において、野生型とPax6変異マウスの間に有意差は認められなかった(n=3)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究では、神経発生関連転写制御因子Pax6の異常は母子分離に伴う仔マウスのUSVに対して十分ではないが、父親の加齢に伴う仔マウスのUSV異常に対して相加的に機能する可能性を明らかにした。
これまでの疫学研究や実験動物を用いた研究から、父親の高齢化により様々な精神疾患および発達障害の発症リスクを増大させ、また、高齢の父親マウスから得た仔マウスが行動異常を示すことが報告されているが、それらの分子基盤を解明した報告はなく、今回の成果は、このような現象に影響を与えるリスク因子としてPax6遺伝子を同定した初めての報告となる。

今後の研究の推進方策

これまでの研究成果をもとに、それぞれの実験計画について今後の研究方法を再考する必要がある。
【実験1】当初の計画では、脳領域選択的Pax6変異マウスを作製する予定であったが、これまでのPax6変異マウスのUSV解析の結果より、Pax6の異常は母子分離に伴う仔マウスのUSVに対して十分ではなく、父親マウスの加齢に伴う変化を修飾することにより、仔マウスのUSVに影響を及ぼすことが示唆されており、その影響は母方よりも父方由来であることを見出している。そこで、精原細胞および精母細胞、精子におけるエピゲノム変化について生化学、免疫組織学的手法を用いて検討する。その際に、若年齢および中年齢のPax6変異の雄マウスの精巣を用いることにより、USVの結果と同様に、父親マウスの高齢化に伴って初めて検出される変化を捉える。
【実験2】 引き続き、Pax6変異マウスの小脳および脳幹の解析を進める。また、計画通り、神経生理学的解析を進める。その際に、若年齢および中年齢のPax6変異の雄マウスから得られたPax6変異マウスを用いることにより、USVの結果と同様に、父親マウスの高齢化に伴って初めて検出される変化を捉える。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度の研究により、雄マウスにおける神経発生関連転写制御因子Pax6の異常は、母子分離に伴う仔マウスの超音波発声ultrasonic vocalization (USV)に対して直接的に影響を及ぼさないが、その一方で、父親の加齢に伴う仔マウスのUSVの異常に対して相加的に影響を及ぼすことを見出した。
この過程で、Pax6変異雄マウスと交配するための野生型雌マウスを購入予定であったが、予定以上に雌マウスの妊娠率が高かったこと、また、仔マウスの表現型が顕著であったために交配数を減らすことが出来たこと等により、雌マウスの購入費用を減らすことができたため。
平成26年度に東京で開催される超音波発声に関する国際会議へ参加する旅費等に使用する予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 4件)

  • [雑誌論文] A Sensitive Period for GABAergic Interneurons in the Dentate Gyrus in Modulating Sensorimotor Gating.2013

    • 著者名/発表者名
      Guo, N., Yoshizaki, K., Kimura, R., Suto, F., Yanagawa, Y. and Osumi, N.
    • 雑誌名

      The Journal of Neuroscience

      巻: 33(15) ページ: 6691-6704

    • DOI

      10.1523/JNEUROSCI.0032-12.2013.

    • 査読あり
  • [学会発表] 父親の高齢化がマウスの自閉症様行動に及ぼす影響の解析2014

    • 著者名/発表者名
      木村 龍一, 吉崎 嘉一, 稲田 仁, 大隅 典子
    • 学会等名
      第3回東北脳科学ウィンタースクール
    • 発表場所
      大崎(宮城)
    • 年月日
      20140215-20140215
  • [学会発表] 1次体性感覚野と1次運動野の境界付近における分子発現の違いによる領域分け2014

    • 著者名/発表者名
      岡田 将平, 大隅 典子, 勝山 裕
    • 学会等名
      第3回東北脳科学ウィンタースクール
    • 発表場所
      大崎(宮城)
    • 年月日
      20140215-20140215
  • [学会発表] 脳のカタチと働き~心は分子でどこまで理解できるか2013

    • 著者名/発表者名
      大隅典子
    • 学会等名
      第36回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      20131206-20131206
    • 招待講演
  • [学会発表] Pax6欠損は父親の高齢化による自閉症様行動の発症を促進させる2013

    • 著者名/発表者名
      吉崎 嘉一, 木村 龍一, 稲田 仁, 大隅 典子
    • 学会等名
      第36回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      20131205-20131205
  • [学会発表] Paternal aging decreases pups' mother calls in the mouse with acceleration by Pax6 haploinsufficiency: insights on genetic and epigenetic influence2013

    • 著者名/発表者名
      Yoshizaki, K., Kimura, R., Inada, H. and Osumi, N.
    • 学会等名
      The Networked Brain SfN Satelite meeting
    • 発表場所
      サンディエゴ(アメリカ)
    • 年月日
      20131107-20131108
  • [学会発表] Advantages to model biological traits in animals to understand mechanisms of psychiatric diseases2013

    • 著者名/発表者名
      Osumi, N.
    • 学会等名
      日独六大学コンソーシアムシンポジウム
    • 発表場所
      ゲッチンゲン(ドイツ)
    • 年月日
      20130913-20130913
    • 招待講演
  • [学会発表] Endophenotypes and microendophenotypes: Bridging animal models to psychiatric diseases2013

    • 著者名/発表者名
      Osumi, N.
    • 学会等名
      WFSBP Congress 2013 11th World Congress of Biological Psychiatry
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20130627-20130627
    • 招待講演
  • [学会発表] Influence of chronic subcortical ischemia on anhedonia-like behavior in mice2013

    • 著者名/発表者名
      Yoshizaki, K., Wakita, H. and N. Osumi, N.
    • 学会等名
      WFSBP Congress 2013 11th World Congress of Biological Psychiatry
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20130624-20130624
  • [学会発表] Pax6のヘテロ変異がマウス超音波発声に及ぼす影響2013

    • 著者名/発表者名
      Kimura R, Yoshizaki K, Sugiyama T, Suzuki J, Nakamura R, Osumi N
    • 学会等名
      第36回日本神経科学大会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20130622-20130622
  • [学会発表] Pax6 modulates predisposition of autism by advanced paternal age in mouse2013

    • 著者名/発表者名
      吉崎嘉一, 木村龍一, 大隅典子
    • 学会等名
      第36回日本神経科学大会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20130622-20130622
  • [学会発表] 心の病の神経発達仮説2013

    • 著者名/発表者名
      大隅典子
    • 学会等名
      東京都医学総合研究所セミナー
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20130419-20130419
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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