研究課題
本研究は、シンプルな脳を持つ線虫をモデルとして自発行動発現の神経機構解明を目指すものである。自発行動を制御する神経回路機能を明らかにするためには、行動中の動物を対象として、脳の多数の神経活動を同時に計測するとともに、チャネルロドプシン等の光感受性機能分子を用いて神経活動と行動との因果関係を明らかにすることが重要な課題となる。近年、GFPをベースとした蛍光カルシウムプローブの開発が飛躍的に進んできたが、高性能なプローブは波長域が緑色域に限定されているため上記課題の実施が困難であった。そこで、本年度は、高性能な赤色蛍光プローブの開発と生体神経活動可視化への応用を行った。まず、R-CaMP1.07をベースに超高感度・超高速の赤色カルシウムプローブR-CaMP2を開発し、自由行動中の線虫において、神経活動および筋肉活動の同時計測および、光操作による行動の制御が可能であるかどうかを検証した。GABA作動性抑制性運動ニューロンに緑色蛍光プローブG-CaMPおよびチャネルロドプシンを発現させ、投射筋肉細胞にR-CaMP2を発現させた線虫株を樹立した。さらに、高速レーザー顕微鏡にトラッキング装置を組み込んだイメージングシステム(平成25年度に開発)に改良を加え、光刺激とイメージングの同時測定を可能にした。このシステムを用いて、光刺激に伴うGABAニューロンの活動上昇と筋での活動低下の2色同時イメージング、および筋弛緩による行動停止の同時記録に成功した。線虫脳に開発した高性能プローブを発現する線虫系統を体系的に樹立し、自発行動中の神経活動を可視化した。本研究成果は、生体での神経活動と行動との関連を詳細に調べることを可能にするものであり、光を利用した脳科学・生命科学分野での応用が期待される。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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